<広島0-3ヤクルト>◇22日◇マツダスタジアム

 高木がまたチームを連敗地獄から救った。プロ4年目のヤクルト高木啓充投手(26)が、広島打線を4安打無四球に抑え、プロ初完投を初完封勝利で飾ってチームの連敗を4で止めた。前回16日横浜戦でのプロ初勝利も、チームの連敗を9で止めていた。救世主の2戦連続の快投でチームは同率4位で広島に並び、再び3位阪神まで3チームが0・5ゲーム差にひしめく展開となった。

 また高木だ!

 前夜サヨナラ打を放ったフィリップスをカーブで右邪飛に打ち取ると、笑顔のナインに次から次へと頭をなでられた。「負けられないと思って投げました」と気合満点でマウンドへ向かい、殊勲の勝利に自然とガッツポーズも飛び出した。プロ初白星を挙げた前回登板ではチームの10連敗を阻止。この日も対広島の連敗を6で止める力投だった。

 唯一のピンチは初回だけだった。先頭東出と赤松に連打を浴びたが、無失点で切り抜けると、以降は緩急を織り交ぜながら凡打の山を築いた。直球は球速140キロ台前半も、大きく縦に割れるカーブが決まった。7回0封した10日の対戦よりも多投。うまくタイミングを外し、3番から6番の主軸へは1本の安打も許さなかった。敵将ブラウン監督も「緩い球を力ませて振らせるのが武器なのでは」と悔しそうに振り返った。

 グラブには「傾」という1文字が刺しゅうされている。前田慶次が自由奔放に生きる様を描いた歴史漫画「花の慶次」を読んだことがきっかけだ。主人公が「常識外れ」な傾奇者(かぶきもの)として活躍し、個性派そろいのプロで自身もそういう存在でありたいという思いが込められているという。

 4回には左前へプロ初安打を放ち、記念球も増やしてリズムに乗った。1軍では最長7イニングだった右腕が、三塁も踏ませず堂々の初完投初完封。9回のマウンドへ上がるときには「あと3人」とはやる気持ちもあったが、打者を前にして「1人1人、1球1球と思っていきました」と、冷静さも失わなかった。

 前日落球から痛恨のサヨナラ負けを喫し、5位に転落して迎えた一戦。高田監督も「昨日いやな負け方をしたから。石川や館山がちょっと良くないから、本当ありがたいね」と、CS争いへ踏みとどまる1勝を運んできたニューヒーローに、感謝しきりだった。

 [2009年9月23日9時41分

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