<ヤクルト2-8阪神>◇29日◇神宮

 20歳由規の勢いに力負けしない。阪神新井貴浩内野手(32)が内角直球を強引に振り抜いた。試合の流れを大きく左右する立ち上がり。この1本が虎を乗せた。

 「どんどん振って行こうと思った」。初回だ。1死一、三塁のチャンスで4番金本が三邪飛に倒れた。止まったかに見えた流れを、5番新井が引き戻した。カウント0-1からの2球目。内角直球を思いきりたたき、弾丸ライナーは右翼線へ。貴重な貴重な先制点だ。「良かった」。そのひと言に喜びが凝縮されていた。

 ここから打線が活性化。中盤も加点を続け、6-2と4点リードで迎えた7回。今度はツバメ戦士の戦意を削いだ。マウンド上には3番手押本。カウント1-1からの3球目だった。「(球種は)狙ってはいなかったけど」。体が自然に反応する。高く浮いた135キロスライダーを豪快に振り抜いた。20日広島戦(甲子園)以来、8試合ぶりの1発はダメ押しの15号左越えソロ。「差し込まれたけど、うまく押し込めた」。効果的な2つの働きで完勝に貢献。「いい仕事ができて良かった」と喜んだ。

 シーズンも佳境。他の選手同様、万全の状態ではのぞめない。昨季は腰の疲労骨折で約1カ月戦線を離脱したが、今季もここに来て背中と腰に張りがある。22、23日の横浜戦前には自らの判断で試合前の打撃練習を回避したほどだ。遠征中には宿舎内でトレーナーからマッサージを受け、球場に入ってもケアを怠らない。常川チーフトレーナーは「大きな体だから(新幹線などの)移動はキツイんじゃないかな」と心配するが、グラウンドに立てば決して不安を感じさせない。

 実は右投手からの1発は7月29日横浜戦(甲子園)でマストニーから放って以来、約2カ月ぶり。「初回に(点を)取れなかったら嫌な感じになっていた。初回に取れたのが良かった。ホームランを打つ力は十分ある。力みが取れれば、もっと打てる」。真弓監督も残り6試合の活躍に太鼓判を押した。3位ヤクルトに再び0・5ゲーム差。カード1勝1敗で迎えた30日は大事な大事な1戦になる。「0・5ゲーム差というより、明日の試合にベストを尽くすだけ」。来るべき決戦を見据え、新井は帰り道を急いだ。

 [2009年9月30日11時7分

 紙面から]ソーシャルブックマーク