プロ野球のフリーエージェント(FA)権を行使する手続きが9日、解禁となった。今年6月に海外FA資格を初取得したヤクルト五十嵐亮太投手(30)は、都内の球団事務所でFA宣言し、メジャー挑戦を表明した。158キロの日本人最速タイ記録を持つ右腕は、あこがれの舞台でも自慢の速球で挑むことを誓った。今季、公示されたFA有資格者は87人で、そのうち再取得を含めて海外FA条件を満たしているのは66人。

 カメラのフラッシュを浴びる中、五十嵐は目を輝かせながら言った。「プロ野球に入って、もう1つ上のランクでやりたいと思っていた」。プロ13年目の来季、活躍の場を米国に移す。国内移籍も視野に入れていたが「(米球団から)オファーがなかった場合、他の球団に行くのはヤクルトに失礼なので」と交渉相手をメジャー1本に定めた。

 最速158キロの速球を、世界の強敵にも投げ込む。「スタイルを変えるつもりはない。日本のようには行かないと思うけど、自信を持って、まっすぐで押していきたい」と宣言した。

 昨年の契約更改では、球団が提示した3年契約を断って単年契約を結んでいた。先月下旬には家族と大リーグのア・リーグ優勝決定シリーズ(ヤンキース―エンゼルス)を観戦。織江夫人(31)の理解もあり決断に至った。6月からは週1、2日のペースで、自宅でカナダ人の英会話講師によるレッスンも受けている。「先生には悪いけど、全然ダメです。まったく入ってこない」と苦笑いを浮かべるが、現地での生活に向けて準備を進めている。

 すでに、ヤンキース松井も担当するアーン・テレム氏と代理人契約を結んだ。今後は都内で自主トレを重ねながら、年内までに移籍先を決めることになる。「どこのチームでという気持ちはない。とにかくメジャーのマウンドで、自分のボールを投げるのが目標です」。小学生の時、メジャー観戦した父がホワイトソックスの帽子を買ってくれた。抱き続けてきた夢を、かなえる時がやって来た。【由本裕貴】

 [2009年11月10日8時52分

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