鷹のカズオ養成に本格着手だ。ソフトバンク秋山幸二監督(47)が11日、宮崎秋季キャンプA組(1軍)に途中合流した福田秀平内野手(20)にスイッチヒッターの特別指導を施した。キャンプ参加者では唯一の両打ち。荒削りながら潜在能力を秘めたプロ3年目のティー打撃につきっきりで、苦手の右打席対策を伝授した。アストロズ松井稼頭央(34)のような、日本を代表するスイッチヒッターの遊撃手育成が究極目標だ。キャンプはこの日で第2クールを終えた。

 マンツーマンレッスンが終わらない。3日連続の雨。生目の杜(もり)運動公園の室内練習場は午前A組、午後B組と入れ替わるが、B組のアップが始まっても秋山監督は福田を指導する手を休めなかった。「右と左で同じ打ち方の選手はいない。左は一塁に駆け出すのもあるし、多少体が突っ込んでもいいけど、右はしっかり右足体重にして」。スイッチヒッター強化練習。指揮官を独占するぜいたくなティー打撃で福田が甲高い球音を響かせた。

 第2クール2日目の9日からA組に昇格した期待の3年目。ソフトバンク初の平成生まれ選手として入団し、1軍未経験ながらシュアな打撃は伸びしろたっぷりだ。今秋はウエートトレーニングの成果もあり、強い打球が飛び始めた。「左ではいいヘッドスピードをしている」と評価する指揮官が、直接指導で両打ちの才能開花を狙ったわけだ。

 課題は右打席にある。元来左打ちの福田は多摩大聖ケ丘3年の夏前に「左投手が打ててなくて」両打ちに挑戦。練習試合でいきなり右打席で4打数4安打と結果を残し、最後の夏に臨んだ。だが転向から3年が過ぎたが、完全にモノにはしていない。秋山監督はティー打撃で「体の使い方で、瞬時に回路を切り替えられるように」と5球ごと打席を入れ替えさせた。福田は「右と左は別もの。ピッと切り替えることを意識した」と充実の汗を浮かべた。

 アストロズの松井稼頭央も西武入団1年目にスイッチヒッターに転向。両打ちで史上初のトリプルスリーや日米通算2000本安打など、スターダムを駆け上がった。秋山監督は西武では入れ替わりの形になったが「あいつはよく練習して吸収力がすごかったもんな。入団してすぐに(1軍に)出てきた」とうれしそうに話したことがある。福田も同じ遊撃手。指揮官が求める究極の姿がここにある。【押谷謙爾】

 [2009年11月12日11時18分

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