実りの秋!

 春は下克上を起こせ!

 阪神は16日、高知・安芸の秋季キャンプを打ち上げた。真弓明信監督(56)は、成長株として野原将志内野手(21)、上本博紀内野手(23)を挙げ、来年の春季キャンプでレギュラー組と争わせることを明言。野原将は新井という強敵とのマッチメークになるが、「一緒にやれるところまできている」と最大級の評価をした。若手の底上げが不可欠な虎が、実りの秋を終えた。

 来季4年目を迎える無名の若手が、本塁打のタイトルホルダーに勝負を挑む。来春に実現する無謀とも言えるマッチメーク。仕掛け人は真弓監督だ。秋季キャンプ打ち上げのこの日、大まじめで波乱の春季キャンプを予告した。「野原将や上本を練習で見て、この力だったら、来年は楽しみだと思った」。“MVP”に2人に名を挙げた。ここまでならよくある話だが、先があった。「ポジション争い、1軍争いになってくる。層の厚さを感じるし、メンバーを決めるのも、悩まないといけない」。世代交代のバトル勃発(ぼっぱつ)に胸を躍らせた。

 ポジション争いは春季キャンプの風物詩だ。以前にも赤星と浜中、桜井と林といった競争があった。ただそれも実力が拮抗(きっこう)した者だから白熱する。新井vs野原将ではあまりにも実績が違い過ぎる。そんな周囲の驚きに、指揮官は真顔で答えた。「(実力は)まだまだだけど、先輩のプレーを近くで見て、勉強するのはいいこと。そこまで来ている。一緒にやれるところまでね」。実りの秋を迎えて、手応えを隠さなかった。

 期待してやまないのは仁義のない「下克上」だ。野原将は今キャンプのシート打撃で左中間にアーチを放つなど長打力をアピール。入団3年間で1軍実績はないが、真弓監督の心にも伝わった。「実績のあるなしは仕方がない。でも、勢いや練習量などで、それを押し戻すくらいのことをやってほしい」。若さを前面に押し出して、大番狂わせを願った。

 野原将も「(1軍は)目標というよりも、結果を残さないといけない。帰ってからも、気を抜くことなく、継続して練習したい」と自らを鼓舞した。1軍入りを淡い目標ではなく、現実として見据えた。

 上本も下克上バトルの主役候補だ。二塁は関本、平野、大和らがひしめく激戦区。それでも真弓監督は「(スタメンのイメージは)あるよ」と断言。右打ちやエンドラン、走塁面でも特長を発揮し、小技の器用な選手という印象を植えつけることに成功した。キャンプ、オープン戦の結果次第では、開幕での大抜てきも十分に考えられる。少数精鋭で臨んだ秋のキャンプで、成果は十分に上がった。あとは春を待つのみだ。城島フィーバーで盛り上がる春季キャンプに、世代間抗争という新たな要素も加わった。

 [2009年11月17日11時30分

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