若き才能に救いの手を-。日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が9日、飲酒補導が発覚したロッテのドラフト3位大嶺翔太内野手(18)の救済を訴えた。自身も未成年での喫煙事件から更生した経験があり、周囲のサポートの大切さを実感。「たたいてつぶすのは簡単。みんなで温かく迎えてあげてほしい」と力説した。この日は契約更改交渉に臨み、6000万円増の年俸3億3000万円プラス出来高払いでサイン。球界史上最年少の3億円プレーヤーが、事態収拾へ一石を投じた。

 4年前がフラッシュバックするような騒動に、ダルビッシュが直球を投げ込んだ。契約更改会見後、高校生の大嶺翔が飲酒して補導された一件について口を開いた。未成年で喫煙したことが公になってしまった過去を持つ「経験者」が、訴えかけた。

 ダルビッシュ

 (不祥事の重大性など)社会人になっていないから何も分かっていなかった部分もあったと思うし、自分も分かっていなかった。

 もちろん飲酒という行為を肯定するわけではない。ただ犯した過ちを認めた上で、若者を正しい道へ導くことの必要性を説いた。

 入団1年目の05年2月、沖縄県内のパチンコ店で喫煙しているところを写真週刊誌にキャッチされ、不祥事が明るみに出た。大物新人と期待されながら右ひざ関節炎などで出遅れた2軍キャンプ中の出来事。謹慎処分を受け、2軍施設を置く千葉・鎌ケ谷へと強制送還された。入団前と後の違いはあるが、今回の大嶺翔の姿は自分と重なった。

 ロッテ側が入団取り消しを示唆するほどの反応に、周囲のアフターケアの重要性を力説した。「球団(ロッテ)も厳しいことを言っている。でも、たたいてつぶすのは簡単だけれど、みんなで温かく迎えてあげてほしい」と願った。自身は関係があった地方都市の首長から、中傷と感じられる批判的な言葉も浴びた。周囲の「大人」を信用できなくなるような反応も予想されるからこそ、声を強めた。

 失意のどん底にいた時、最後のよりどころは、野球だった。「自分の時は球団が温かく迎えてくれた」。当時の指揮官だったヒルマン監督(現ロイヤルズ)、故菅野光夫2軍寮長(享年54)らが面談や練習相手を務めるなど、献身的にサポートしてくれた。1年目の6月には1軍登板のチャンスをもらい、プロ初登板初勝利を挙げた。札幌ドームのマウンドに立った時の大きく、温かい拍手は、今でも忘れられないという。

 同じパ・リーグの「後輩」を救うために見せた姿勢。同世代の西武涌井、楽天田中、西武には注目の菊池も入団する。「球の速い、パワーのある投手もいるし、同じ先発、中継ぎで対戦するのも楽しみ」と、大嶺翔を含む“菊池世代”のプロ入りを心待ちにしている。不祥事をバネにし、球界トップクラスの選手へと上り詰めた。ダルビッシュの紡いだ実話のサクセスストーリーが、未来ある高校生を守る抑止力になる。【高山通史】

 [2009年12月10日9時28分

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