ソフトバンク杉内俊哉投手(29)がタイトル3連覇で「伝説のエース」になる。10日に鹿児島・薩摩川内市内で自主トレを公開。「タイトルは全部欲しい」と宣言した上で、3年連続の奪三振王に強い意欲を示した。先発投手の主要4部門で同一タイトルを3年以上連続で獲得したのは過去に7人だけ(2リーグ分立後)。稲尾和久(西鉄)金田正一(国鉄)江川卓(巨人)ら伝説的な投手しかなしえていない快挙に挑む。

 2010年、日本最強左腕が球史に名を刻む。練習を終え、体を火照らせた杉内が熱き思いを口にした。「タイトルは全部欲しい」。貪欲(どんよく)な目標を掲げた中で特にこだわりを示したのが、08年から保持している最多奪三振のタイトル。自ら話題を持ち出して「3年連続で奪三振王をとれるようにしたい。2年続けているので、3年、4年と伸ばしていきたい」と誓いを立てた。

 「7人のサムライ」に肩を並べる。先発投手の主要4部門(最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率)で同一タイトルを3年以上連続で獲得したのは7人しかいない。金田、稲尾、江夏、鈴木、江川、野茂、松坂。いずれも後世まで名を語り継がれる名投手ばかりだ。裏を返せば、成績を残し続けることがいかに困難かを如実に物語っている。

 杉内自身も“王座防衛”の難しさは十分に理解している。「パ・リーグには三振をとれる投手が多いからね」。セ・リーグでは04年の阪神井川を最後に200奪三振が出ていないのに対し、パ・リーグの奪三振王争いは05年から5年連続して200奪三振以上で決着するなど激戦の様相だ。杉内も08年は日本ハム・ダルビッシュに5個差、昨年は西武涌井に再び5個差でかろうじて競り勝った。

 だからこそ、現状に満足はしない。「直球のスピードもそうだし、変化球もすべてキレを増すようにしたい。150キロも投げてみたい」。直球の最速は現在149キロ。大台突破に向け、今オフから新たに体幹を鍛えるストレッチ「ピラティス」を練習へ取り入れている。個人契約を結ぶ河村茂トレーナー(28)は「腹圧(腹をふくらませる力)を鍛えて高めることで、体幹に安定感が増してブレがなくなる」と説明。10月に30歳を迎える杉内だが、心身ともに向上を続けていく。

 開幕に向けて仕上げに余念はない。26日までの自主トレ期間中には数回程度ブルペンにも入る予定。「けがをしないことが前提。1年間いないと、どのタイトルも厳しくなるんで」と慎重に調整を重ねていく。万全の準備を施し、「杉内伝説」が幕を開ける。

 ◆3年以上連続での同一タイトル獲得

 先発投手の主要4部門では2リーグ分立後、7人が達成。最多勝は90~93年の野茂英雄(近鉄)99~01年の松坂大輔(西武)。最優秀防御率は56~58年の稲尾和久(西鉄)。最多奪三振は51~53年と58~60年の金田正一(西鉄)67~72年の江夏豊(阪神)同じく67~72年の鈴木啓示(近鉄)80~82年の江川卓(巨人)90~93年の野茂英雄(近鉄)の5人。1リーグ時代を含めても37年秋、38年春、38年秋、39年と4季連続最多勝のスタルヒン(巨人)が加わるだけだ。最高勝率は達成者がいない。

 ◆ピラティスは1900年代初頭にドイツ人従軍看護師のジョセフ・ピラティスが開発。第一次世界大戦の負傷兵のリハビリ用のエクササイズだった。いわゆる筋力トレーニングとは違い、ヨガのようにメンタル面や呼吸法を活用し、肉体を酷使することなく体幹を鍛えられる。動作の無駄がなくなり、故障しにくくなるという。海外ではハリウッドスターのブラッド・ピットやマドンナ、プロゴルファーのタイガー・ウッズ、日本では女優の米倉涼子らが採用している。

 [2010年1月11日11時30分

 紙面から]ソーシャルブックマーク