日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が「兼任コーチ」に名乗りを上げた。後輩ダースら3選手と宮崎市内で行ってきた合同自主トレを24日、打ち上げ。調整と並行して指導役を務め、今後もチームの若手強化へ一役買う心意気を見せた。1軍投手コーチの小林繁氏(享年57)の突然死で揺らいでいた投手陣を後方支援する格好で、2月1日に始まる春季キャンプから、指導力を発揮することになりそうだ。

 ダルビッシュが突如、ブルペン入りした。投げるためにではない。捕手役を務め、西武野上の立ち投げの投球を受けながら、リリースの感覚などをレクチャー。その合間には隣のブルペンで投げ込んでいたダースにも腕の振り、下半身の重心移動の方法を伝えながら、2人を指導した。「もっと僕の考えが伝わればいいというのがあります」。今後、チームの若手へと還元していく私案を明かした。

 緊急事態を救うためだ。小林コーチの急逝で、激震が走った投手陣。26日のスタッフ会議までに新体制が固まるが、いまだ少なからず動揺がある。自身も「(死去する)前日も話しましたからね…。みんなで力を合わせてやっていくしかない」と神妙に話した。

 キャンプから「兼任コーチ」の役回りを演じれば、少なからず、チームをサポートできる。今回の自主トレでは「チーム

 ダルビッシュ」と名付け、年下の西武野上と田中、ダースへ、あますところなく持論を伝授した。「1割くらいしか伝わっていないと思う。でも1割でも伝われば、いいと思う」。ウエートトレーニング、ストレッチの重要性など、自身が進化したエッセンスを明かした。

 細身の野上、ダースのために食事も管理。全員でともにした夕食の買い出しのレシピは栄養素を考えて決め、他選手をスーパーへと走らせた。野上は約4キロ、ダースは約5キロの増量に成功。チームには弟子入り志願する新人らが多いが、ダルビッシュを前にすると、その意思を伝えてこないことが多いという。オーラに圧倒されてか「実際に会ったら話しかけてこない」と苦笑し、入門を遠回しに促した。

 この日は20日間の自主トレ期間中、3度目となるブルペン入り。力感あふれる35球で、言葉ではなく、その姿でも「指導」した。ライバル西武の選手を熱血指導するシーンを見た、同じ施設を利用しているソフトバンク川崎が「教え過ぎ。(シーズン中に)こっちが困るだろ」と忠告するほど。もちろん自身の進化への手応えも十分。「昨年は、ちょっと体の動きがこぢんまりした。もっと力を伝えられるはず」。エースとコーチ。一人二役をまっとうできれば、悲劇で始まった日本ハムの1年が、変わる。【高山通史】

 [2010年1月25日9時40分

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