チリ大地震余波がプレーボールに待ったをかけた。沖縄・宜野湾市でのオープン戦横浜-楽天が2月28日、チリ大地震による津波警報により異例の中止となった。両チームのメンバー交換も終わっていたが、同市立野球場は沿岸部にあり、避難勧告を発令していた同市の中止勧告を受け、試合開始25分前の午後0時35分に中止が決定した。内川、村田ら主力野手が初めて対外試合に出場する予定だった横浜と田中を先発に据えていた楽天も天変地異には勝てなかった。

 試合まで25分という慌ただしい中で、横浜-楽天のオープン戦が中止となった。スコアボードでは両チームのバッテリーが発表されている途中だった。主催する横浜の佐藤球団常務と伊波洋一宜野湾市長(58)が本塁付近でマイクを握り、場内に中止を伝えた。同市長が「沖縄本島地方に津波警報が発令されました。津波は午後3時ごろに到達する予定ですが、1度でなく、何度も来ることが予想され、試合の途中で避難するのは危険です」と説明。スタンドの7500人の観客からどよめきが巻き起こった。

 沖縄本島地方には津波警報が出ていたが、当初は影響はないとされていた。だが津波の高さが2メートルに達する可能性があると分かり、状況が一変した。午前11時20分に宜野湾市の防災対策本部が避難勧告を発令、沿岸部での興行の開催中止勧告を行った。宜野湾球場は最も近い部分で海まで約30メートル。「球場自体は大丈夫だが、周辺道路が水没する危険がある」(同市長)。球団は5回打ち切りなどでの開催を模索したが、最終的には同市長と協議し、中止を決めた。球場に近いコンベンションセンターでは医学系学会が行われていたが同様の決断が下された。

 横浜は村田、内川の主力がオープン戦初出場、楽天は田中が先発する。好天の日曜日ということもあり、スタンドの約8割が埋まっていた。だが業務担当の横浜笹川博史取締役(56)は「人命優先。この人数が避難するのには時間も必要。当初の予測より状況が悪化した。(津波中止は)野球界では初めてじゃないかな」と話した。チケット売り場では当日券の払い戻しが行われたが、大きな混乱はなかった。

 メンバー交換も終了し、プレーボールを待つだけ。午前中にキャンプを打ち上げ、いよいよ試合モードに入っていた横浜尾花監督は「主力が出場するはずだった。暖かくて動ける状態で見てみたかった」としぶい表情を浮かべたが、即座に「こればかりは仕方ない」と切り替えた。4番三塁で出場予定だった村田も「仕方ないね。今日で終わりじゃない」と話した。まさかの中止に、誰もが天を仰ぐしかなかった。【鈴木良一】

 [2010年3月1日8時45分

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