<広島7-5西武>◇4日◇マツダスタジアム

 3日に自打球で右目眼窩(がんか)底を骨折した西武中村剛也内野手(26)が入院していた福岡市内の病院を退院し、帰京した。腫れが引くまで最低でも1週間の安静が必要で、20日の開幕に間に合うか微妙な状況で、ナインが燃えた。この日の広島戦(マツダスタジアム)で、37歳西口文也投手が3回パーフェクト投球を見せれば、打線はGG佐藤外野手(31)の2号2ランなどで1回に一挙4得点。試合は敗れたが、4番離脱の危機は全員でカバーする。

 開幕前に迎えた4番不在のピンチに、ベテラン右腕が目を覚ました。西口が近年の不振を吹き飛ばすように、オープン戦初登板で3回を完全投球。最速136キロながら、変化球で強弱をつけ、主力が並んだ広島打線に1人の走者も許さない。片岡に「もう今季一番!」と冷やかされるほど内容も充実していた。中村が負傷離脱し「同じチームSSK(同社用具を愛用)だし、早く帰ってきてほしい。いない時はみんなでカバーできれば」と復活にかける37歳が意地を見せた。

 主砲離脱の危機感を強めた打線も奮い立った。1回から4得点だ。2死二、三塁で、新外国人ディー・ブラウン外野手(31=ドジャース3A)が左前に落とす2点先制適時打。GG佐藤は高めの甘いボールを見逃さず、左翼2階席に2号2ランを運んだ。8回には、中村の指定席4番に座った後藤も中前適時打。決定力を期待される3人が、それぞれ存在感をアピールした。

 ブラウンには「中村の分まで」の思いがあった。キャンプ最終日の2月25日、ストレッチで振り回していた鉄の棒が、歩いてきた中村の顔面を直撃。左目下が切れて血が噴き出し、ブラウンは責任を感じていた。その夜、中村の部屋を訪れると「気にしなくていいよ」と言われてグータッチを交わした。きずなを深めた中村の骨折アクシデントに、燃えないわけがなかった。

 心配したGG佐藤は、中村の負傷状況を報道陣に逆取材するほどで「打つ時に右目はすごく使う。悪くなければいいんだけど…。中村の穴は1人じゃなく、全員でうめていきたい」と言葉に力を込めた。昨季48本塁打、122打点の2冠王が抜ける穴は小さくないが、チーム一丸でカバーして乗り越える。【柴田猛夫】

 [2010年3月5日9時21分

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