<ロッテ4-5ソフトバンク>◇11日◇千葉マリン

 多村桜が、ひと足早く満開だ。ソフトバンク多村仁志外野手(32)が、今季1号&初猛打賞と大暴れだ。チームが苦手とし、多村にとっても天敵だったロッテ大嶺から右中間に豪快な1発。オープン戦で5試合連続長打を記録し、長打率を8割4分に伸ばした。昨春は右肩痛で開幕1軍を漏れたスラッガーが今季は1年間、ポイントゲッターとして働く。

 今の多村には向かい風も関係ない。千葉マリン特有の強風がライトからレフト方向に吹いていた。2回の1打席目。970グラムのバットでとらえた打球が、右中間スタンドに吸い込まれた。今季1号だ。

 「きっちりバットを振れている。結果を求める時期じゃないですが、天気と相まって気分がいいです」。澄み渡った快晴の中、笑顔の花が咲いた。

 数字が脅威の能力を物語る。この日、初猛打賞でオープン戦は25打数11安打の打率4割4分。ただのアベレージヒッターではない。打率以上にパワーが違う。これで5試合連続長打をマークし、長打率はなんと8割4分。25打数以上こなしている打者でダントツの成績を残している。

 「今年、打球が飛ぶんですよ」と本人は首をひねるが、春季キャンプで初めてプールトレを導入するなど徹底した体調管理が奏功している。

 数字だけではない。シーズンにもつながる1発だった。相手先発はロッテ大嶺。昨年チームは5試合対戦し、0勝3敗と1度も土をつけられなかった右腕。多村自身、6打数ノーヒットに抑えられている。今季初顔合わせで強烈な存在感を示してみせた。

 家族の思いも力に変えている。今回の関東遠征では首脳陣の計らいにより、横浜から“自宅通勤”が認められた。今年も単身赴任生活を決めた多村にとっては貴重な時間。球場入り前には子供の幼稚園送りが日課。「この前、2番目の子供に、パパはどうして毎日家に帰ってこないの?って聞かれたんですよね。(関東遠征で)自宅に泊まらせてもらえる監督、チームに感謝しています」(多村)。この恐怖のスラッガーが、この日は6番に座った。松中4番シフトを見据えたオーダーで得点を挙げる役割に、バット爆発でしっかりと応えてみせた。

 昨春、開幕1軍に多村の名はなかった。右肩痛で5月下旬まで復帰が遅れた。だが、今年は違う。6回裏2死二塁の場面では、西岡の右前安打をさばき、ライトから本塁にストライク送球で捕殺を記録。背番号6の輝きが増し、ホークス打線はまたぶ厚くなった。

 [2010年3月12日10時56分

 紙面から]ソーシャルブックマーク