<巨人6-1広島>◇17日◇東京ドーム

 広島が鮮やかな「足攻」で天敵巨人にひと泡吹かせた。4回1死一、三塁からダブルスチールに成功。天谷宗一郎外野手(26)が二盗する間に、三塁走者梵英心内野手(29)が本盗に成功し、先制点をもぎ取った。中盤以降、投手陣が崩れて大敗したが、相手バッテリーを揺さぶった。キャンプから積極的に取り組んできた走塁練習が実り、開幕に向け準備が整ってきた。

 ワンサイドで大敗する中に光が見えた。藤井から先制点を奪った武器は「足」だった。4回1死一、三塁。栗原への3球目だった。一塁走者・天谷が二盗を試みた。捕手阿部が三塁走者・梵をチラリと目でけん制したが、そのまま二塁に送球。その瞬間、梵は本塁に向け猛然とダッシュ。二塁手E・ゴンザレスが本塁に転送したときには、ホームに滑り込んでいた。

 実はサインではなかった。野村謙二郎監督(43)は「選手に任せているから。フリーサインだった。行けると思って、自信があるから行った」と明かした。天谷は「ヨギ(梵)さんに聞いてください。あれはうまく決まりましたね」とニンマリ。好判断で本盗した梵は「なかなか得点できていない。キャンプからやって来たことをやってリズムを作っていければいい。走れなきゃ僕は商売にならない」と話した。

 梵の出塁がきっかけだった。1死走者なしでチーム初安打となる左前打。すぐに二盗を決めて、好機を拡大した。この日は2安打2盗塁の大暴れ。オープン戦6盗塁は12球団トップタイ。同数で並ぶソフトバンク川崎はオープン戦を終えており、3試合を残す梵は盗塁王の有力候補だ。指揮官は言う。「左投手だけど(梵、天谷ともに)相手のクセ、モーションを見て、自信を持って行っているわけだから」。塁上ではある程度フリーに盗塁を仕掛けるよう委ねている。

 昨季、7勝14敗3分けと大きく負け越した巨人にもカウンターパンチを食らわせた。巨人西山バッテリーコーチは「予期しないことをやって今後の参考になった。(打者が)4番だから『まさか、あの場面、そういうことがない』と決めつけてはいけない」と警戒した。投手陣が崩れて完敗したが、相手を警戒させたのは収穫。野村監督は「勝ちにつながる走塁をしてほしい」と望むが、今季の戦い方は形になってきた。【酒井俊作】

 [2010年3月18日11時25分

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