<横浜5-0広島>◇9日◇横浜

 横浜に番長が帰ってきた。9日、右肩の張りで出遅れていた三浦大輔投手(36)が、今季初登板で広島を6回4安打無失点に抑えて初勝利。3月20日、巨人とのオープン戦で8本塁打を浴びての14失点から立ち直った。エースが戻り、借金生活からの巻き返し態勢が整った。

 2週間遅れの「開幕戦」で今季初勝利を挙げた。横浜のエース三浦が円熟の89球で広島打線を6回4安打無失点に抑えた。ヒーローは「バックがしっかり守ってくれた。先制点も取ってもらった。声を出してくれて、みんなに乗せられた」と、まずチームメートに感謝。その思いを伝えるべく、試合後は1人1人とガッチリと握手した。

 マウンド上で技術と力を見せつけた。1回、連続三振で流れに乗った。東出にはフォーク、梵には直球。持ち味の制球力で丁寧に低めを突いた。「三振を取る投手じゃない。勘違いしないように」と言い聞かせながらも、手応えをつかんだ。「ボールがいっている感じがした。切れがよかった」。1回に天谷を打ち取った直球は今季初の140キロを記録した。

 苦難を乗り越えての1勝だ。右肩の張りでキャンプ終盤はノースローの日々が続いた。36歳。「年齢なりの調整がある」と冷静を装っていたが、オープン戦の初登板は3月10日までずれ込んだ。その後も球威が上がらず、同20日の巨人戦では毎回の8本塁打を浴びた。「記憶にない」という14失点。どんなときも冷静な男が「肩の張りよりも、心の張りが取れない」と思わず本音をもらした。

 沈んだ心に再び火をともしたのは、やはり野球だった。開幕戦は自宅のテレビで見た。本来なら自分が立つはずのマウンドにはランドルフがいた。逆転負けでチームは球団ワーストの開幕戦7連敗。「その場にいられない自分が悔しい」と唇をかんだ。落ち込んでいる暇などないと言い聞かせ、全体練習の前に黙々と走り込みを行い、体の切れを戻すことに全力を傾けた。

 エースの好投で、今季初の連勝とカード初戦の初勝利をものにした。お立ち台のエースは、ファンに「ただいま」と照れくさそうに笑った。「遅れた分を取り返していきたい」。ハマの番長の復活とともに横浜の反攻が始まる。【鈴木良一】

 [2010年4月10日9時20分

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