阪神星野仙一オーナー付シニア・ディレクター(SD=63)が25日、将来のプロ野球監督復帰に意欲を見せた。大阪・泉佐野市内でトークショーを開催。「私ももうひと勝負しようと。闘志だけはありますから」と語り、現場復帰への意欲を明かした。日本代表監督を務めた08年の北京五輪以降、今後について話すのは初めて。

 トークショーで司会者から「将来の夢」を問われた時だった。星野SDはきっぱり言った。「私も人生の最後で、もうひと勝負しようと。闘志だけはありますから。気持ちだけは若い者に負けませんよ」。司会者に「もう1度監督をということですね?」と念を押されると笑顔で返し、500人の聴衆から、この日一番の拍手がわき起こった。

 4位に終わった北京五輪後、自身の今後について言及するのは初めてだった。もう1度、ユニホームを着て勝負がしたい。もう1度、チームを指揮して優勝を味わいたい。沈黙を守って来た闘将に、再びファイティングスピリットがよみがえったのだろう。「金しかいらない」と宣言して臨んだ北京五輪はメダルすら逃した。負けたままでは終われない。まだ見ぬ日本一の目標も残っており、野球人生の集大成として“ラスト登板”への意欲が高まったようだ。

 トークは監督のやりがいにも及んだ。「強いチームなら昼寝してても勝てる。でも私は弱いチームばかり受け持たされる。でも弱いチームを強くするのが、夢でありロマンでもある。子どもが成長していく楽しみと同じ。出来の悪い息子ほどかわいいって言うじゃないですか。もっとも、初めは『優勝させに来たぞ!』って言うと、みんなこのおっさんアホかって顔してましたけど」。01年オフに4年連続最下位だった阪神監督を引き受け、03年に18年ぶりリーグ制覇に導いたことを振り返って熱弁。低迷するチームに勝つ喜びを教えることが、自身の天分ではないかと自己分析した。

 発言は阪神次期監督を希望するものではない。自分を望んでくれるなら、12球団OKの思いがあるとみられる。ただし、現在は阪神フロントの中心的存在にあるSDの身分。強い「阪神愛」を持っているとはいえ、球団もチームの顔がライバルチームに流出することは、何としても阻止したいところだろう。

 05年には低迷していた巨人がOB以外では初めて、監督招聘(しょうへい)に動くなど、中日と阪神でリーグ優勝3度を誇る指揮官としての評価は高い。今回の発言を受け、今後の動向から目が離せなくなってきた。【松井清員】

 [2010年4月26日8時36分

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