<ソフトバンク3-2楽天>◇27日◇福岡ヤフードーム

 お母さん、ありがとう!

 ソフトバンク川崎宗則内野手(28)が、今季2号アーチで天敵を粉砕した。楽天戦(福岡ヤフードーム)の5回裏1-1と同点の場面で、楽天先発の永井怜投手(25)から右翼席に勝ち越し2ラン。昨季5勝を献上していた天敵に3年ぶりに本拠地で土をつけた。お立ち台では2日前が誕生日だった母親に「産んでくれてありがとう」と絶叫。エンターテイナーの活躍で、貯金を再び3に戻し、首位ロッテに2・5ゲーム差と再接近した。

 ホームラン打者のようなスイングで、天敵を切り裂いた。同点で迎えた5回。1死で二塁に走者を置き、川崎の集中力は極限まで高まっていた。「永井君は本当にいい投手。最初からいかないと」。初球。高めに浮いたフォークを逃さなかった。アッパー気味のフルスイングから、高いフォロースルー。打球は、一直線で右翼席へ飛び込んだ。「まさかホームランになるとは、思ってました」。自画自賛の完ぺきな1発は、貴重な勝ち越し弾となった。

 リーグダントツの47安打を放つなど、好調な要因の一つがフォローを高くとるアッパー気味のスイングだ。オフから取り組んだこのスイングに、春季キャンプでも「今年は打球が飛ぶんですよ」と効果を実感。4月中に2本目のアーチを放ったは、プロ11年目で初。俊足、巧打に長打力が加わった「新ムネリン」は、相手にとって脅威以外の何物でもない。

 プレーだけでなく、選手会長としてチームの柱にもなっている。7回表。2番手甲藤が先頭にストレートの四球を与えたところで、マウンドに行きゲキをとばした。「興奮していたから、何を言ったか覚えてない」。昨季終盤には、ボール球を投じた時だけマウンドを足で直す癖を持つ投手を、先輩後輩に限らず注意したこともある。「野手も投手と一緒に戦っているわけだから」。一丸となって戦ったことで、07年5月から本拠地では勝てていなかった永井に土をつけることにも成功した。

 お立ち台でも盛り上げた。「私事ではありますが、今日は母ちゃんの誕生日なので勝てて、ホームランを打ててよかった。僕を産んでくれて本当にありがとう」。実際には母・絹代さん(59)は2日前の25日が誕生日。それでも母親への感謝の気持ちを最高の舞台で伝えた。最後は恒例となった「チェスト!」の大絶叫。実数発表後最少となる2万2676人の観客を大きく沸かせるなど、スターとしての仕事も果たした。

 頼れる男の活躍に「(川崎の)1発が生きたな」と秋山監督も手放しで喜んだ。チームは貯金を再び3に戻し、首位ロッテとは2・5ゲーム差。7年ぶりのVまで、川崎がグイグイとチームを引っ張り続ける。【倉成孝史】

 [2010年4月28日11時23分

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