<中日3-1ソフトバンク>◇13日◇ナゴヤドーム

 これまで打線を分断していた男がついに目覚めた。新外国人ディオニス・セサル外野手(33=メキシカンリーグ)が貴重なエンドランを成功させた。0-1で迎えた5回無死一塁。カウント2-2からソフトバンク大隣の直球を逃さなかった。打球はライト前へと転がり一塁走者和田が三塁に到達。大島のタイムリーで同点に追いつくと、セサル自身もチェンの遊ゴロの間に決勝のホームを踏んだ。

 「エンドランだったんでとにかくゴロを打とうと思ったよ。チームが勝てて良かった」。開幕当初は初体験の人工芝に戸惑った。メキシカンリーグではめったに経験しない落差のあるフォークにも驚いた。打率は1割4分7厘まで下がり4月25日に2軍降格。珍しく落ち込んでいたドミニカンは、18日ぶりの1軍で最高の笑顔を見せた。

 セサルを笑顔にさせる理由がもう1つある。1週間前に愛妻・アンドレア夫人(33)とともに4人の子どもたちが来日した。数日前には長女アレクサンドレアちゃん(8)に「着物」をねだられた。翌日の練習後には家族全員で名古屋の栄まで探しに行った。そんな日常が背番号7を前向きにさせた。

 落合監督は試合後に「やっとセサルが帰ってきたな。やっぱりこの打順が1番落ち着くだろ。リフレッシュ休暇も終わりだ」と上機嫌で話した。セサルは「もっと打てるように頑張るよ」と初めて観戦に訪れた家族とともに球場を後にした。

 チームのため、そして8月まで滞在予定の家族のため。出遅れを必ず取り戻す。【桝井聡】

 [2010年5月14日11時25分

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