<広島5-8巨人>◇30日◇マツダスタジアム

 巨人が苦手マエケンを泣かせた!?

 広島に4点をリードされる苦しい展開も、6回に打者11人一挙7点で大逆転。押し出しなどで2点を返すとエドガー・ゴンザレス内野手(32)の代打逆転満塁弾、坂本勇人内野手(21)の連続アーチ。2連敗中だった前田健太投手(22)から計8点を奪いKOしてみせた。球数を投げさせる作戦が成功し、負ければ首位と今季最大2ゲーム差に開く危機を逃れた。

 2点を追う6回2死満塁、巨人原監督が選んだ作戦は代打エドガーだった。「大事な場面で使ってくれた監督に感謝したい」。指揮官の期待を胸に、助っ人はマウンドに立つ前田健を見上げた。カウント1-1からの3球目。外寄りのスライダーを左中間席の“場外”へ運んだ。うなだれる右腕を横目に、興奮を抑えながらベースを回った。

 盛り上がるナインとのハイタッチ。脳裏をかすめたのは、篠塚打撃コーチとの特訓だった。不調だった6月末、早出特打をベンチで待つ間、体を丸めて座るエドガーの姿があった。「ここまでヒットが打てなかったことはないよ」と、野球人生最長のスランプに悩む日々だった。不振脱出へ連日、早出特打でフォーム修正に付き合ってくれたのが篠塚コーチだった。「篠塚コーチが毎日指導してくれて、いい方向に向かっているよ」。熱血指導は、助っ人砲の心に届いていた。

 続く坂本が自己記録を更新する19号ソロを放ち、ビッグイニングを締めくくった。体勢を崩されながらも、同学年のライバルから13打席ぶりの安打。「やっと打てましたよ。(本塁打数は)シーズンが終わってから考えます。1本でも多く打ってチームに貢献したい」とさらなる量産を誓う。

 打者11人の猛攻、そしてド派手な連発を呼び込んだのは、つなぎの精神だった。4点を追う6回1死から小笠原、ラミレスが単打でチャンスメーク。亀井はフルカウントからの6球目、続く阿部は7球目を見送り、押し出し四球で1点を返す。つなぎの締めは脇谷。追い込まれながらも、6球目を左前への適時打。原監督が「やっぱり脇(谷)だよね。あそこでよくつないで、劇的なホームランにつなげた」と絶賛する一打だった。

 攻略のシナリオは、6回の円陣でつくられた。篠塚打撃コーチが「ボール球に手を出しているから、コースや球種を絞っていこう」と攻略法を伝授。5回までわずか3安打1得点だった打線が、1つのヒントで目覚めた。この回だけで、37球を投げさせスタミナを消耗させるなど、6回途中まで97球を投げさせた。2試合続けて完敗していたが、際どい球を見極め、失投を待つ作戦を敢行しており、三度目の正直で攻略に成功した。

 攻略劇を予感させる出来事があった。殊勲打を放ったエドガーはオールスター休養中、ディズニーランドでリフレッシュした。数あるアトラクションの中でも「スプラッシュ・マウンテンが最高だったよ」と興奮気味に話した。ディズニーが誇る人気のアトラクション。心を躍らせたジェットコースターのように、天敵を一気に攻め立てた。【久保賢吾】

 [2010年7月31日8時55分

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