<巨人9-1阪神>◇5日◇東京ドーム
原巨人が再び、一夜で首位を奪い返した。2回、高橋由伸外野手(35)の先制11号3ランで主導権を握ると、大量9点で圧勝。先発東野峻投手(24)が7回途中5安打11奪三振1失点と好投し、ハーラーダービー単独トップの12勝目をマークした。0・5ゲーム差ながら再び「指定席」に戻り、6日からは得意の広島相手に首位固めに入る。
今まで感じたことのない感覚だった。試合前、東野は震えていた。「大事な試合に投げることができる喜びと興奮で武者震いをしてしまいました」。勝負師の血が騒ぎ立っていた。茨城・鉾田一時代、王者常総学院に真っ向勝負を挑んだ「下克上男」には、強力阪神打線との首位攻防戦は最高の舞台だった。
マウンドに上がれば、あの日の屈辱がよみがえってきた。7月13日の阪神戦、4回に一挙4点を奪われ、勝ち星を逃した。普段は切り替えの早い男だが、その夜だけは違った。「何で、あそこでもっと考えて投げなかったんだろ。冷静になれなかったのが悔しい」。気が付けば、外は明るくなっていた。
阪神打線攻略への秘策が、効果的にはまった。6回2死一、二塁、カウント2-3からの7球目。金本を「縦のスライダー」で空を切らせた。「これまではあまり使ってなかったボール。今日は意識して抜いたり、かけたりして。追い込んでからうまく使えた」。奪った三振は毎回の11個。大一番でベールを脱いだ新球で面食らわせた。
1つの教訓が、胸にはあった。7月20日ヤクルト、同29日の中日戦。2試合連続で終盤に被弾し、勝ち星を逃した。中日戦後「何回同じことをしてんだろ。(先発)失格です」と声を荒らげた。「慎重かつ大胆に。もう同じミスは繰り返さない」。1球1球に魂を込め、1発を許さなかった。
順調に白星を重ねてきたが、約1カ月間白星から遠ざかった。押し寄せる焦りと不安。汗を流すことで吹き払った。練習後に都内のジムへ通い、自宅では約20万円で購入したバイクをほぼ毎日1時間こぎ続けた。「もっともっとうまくなりたい。僕はまだ若いんで、やらなきゃいけない」。パンパンに張った足は、ハードな練習の証しだった。
7回途中1失点でリーグトップの12勝目を挙げたが、笑顔はなかった。7回2死一、二塁、マウンドに駆けつけた原監督から「この回は任せたから全力でこの打者を抑えてくれ」と言われたが、四球を与え「投げきれず、悔しいです」と唇をかんだ。それでも、原監督は「自分のピッチングができるようになったことが成長」と認めた。再び阪神を抜き返し、1日で首位を奪回。9試合続いていた阪神戦の2ケタ被安打も止めた。その立役者は、若き右腕エース東野だった。【久保賢吾】
[2010年8月6日8時36分
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