<巨人1-4広島>◇6日◇東京ドーム

 マエケンが笑った。広島の前田健太投手(22)が巨人打線相手に8回7安打1失点の力投で、巨人東野に並ぶハーラートップの12勝目を挙げた。前回対戦した7月30日には、6回に一挙7点を奪われて大逆転を許して悔し涙を流したが、見事にリベンジを果たした。

 天谷の架けた弾道が右翼席に達し、嶋のアーチが右翼ポールを直撃しても、笑顔は見せなかった。6回に2本塁打で3点のリード。前田健に気の緩みは寸分もなかった。「この前も5-1でひっくり返されて、この前と同じ打順。この回が勝負…」。汚名返上に燃える一心だった。

 「魔の6回」に立ち向かった。2安打されていた先頭松本を見逃し三振に抑えると小笠原にも力勝負の内角速球で右飛に料理。35本塁打のラミレスにはスライダーでバットの芯を外して二飛に片づけた。前回登板の7月30日には同じ松本からの打順で、代打エドガーにプロ初の満塁弾を浴びるなど7失点。真っ向勝負で、壮絶なKOを食らったトラウマを消した。

 マウンドで味わった屈辱はマウンドで晴らすしかない。8月4日。蒸し暑いマツダスタジアムのブルペンで投球練習を行った。投げる球数、球種は変わらない。「どんな感じですか」。確認したのはスライダーの軌道だった。球団関係者は「スライダーの曲がりが早すぎたから打者に見極められてしまった」と言う。前田健のスライダーは打者の近くでビュッと曲がる特長があり、相手をてこずらせる。前回登板は中16日の先発だった。手先の微妙な感覚にズレが生じたのか、配球も単調になり、打者に的を絞られ痛打を浴びた。

 この日も序盤はスライダーの制球が悪く、3回には松本に同点打を浴びるなど本調子ではなかった。「今日は悪いと思って3回くらいから開き直りました」。4回からスライダーも決まりだして好投。8回1失点で投げ終えた。野村監督も「負けが込んで疲れもあると思うが、吹っ切れるんじゃないか」とたたえた。

 ハーラートップタイの12勝目。テレビのインタビュアーに話題を振られ「昨日、東野さんが勝ったの知っていたので、何とか追いつこうと思った」とおどけた。鮮やかな復調でトレードマークの笑顔を取り戻した。【酒井俊作】

 [2010年8月7日8時22分

 紙面から]ソーシャルブックマーク