<中日3-0巨人>◇19日◇ナゴヤドーム

 昇り竜が来た。中日が今季2度目の7連勝で5月22日以来の2位に浮上した。吉見一起投手(25)が巨人戦で5安打11奪三振で完封し、11勝目を挙げた。今季の巨人戦は5戦4勝のGキラーぶりを発揮した。チームは日本一になった54年の球団記録に並ぶ本拠地12連勝で、リーグ60勝一番乗り。巨人を3位にたたき落とし、首位阪神を2・5ゲーム差で追走する。

 ピンチを乗り切るたびに叫びまくった。勝てば2位に浮上する大事な一戦。吉見はエースとしてのプライドが、自然と拳を握らせた。「ヤマ場ヤマ場と思って投げていたんで、自然に出た」という、普段よりも大きめのガッツポーズ。最後は右手を天に突き上げ、勝利の喜びに浸った。

 「チェンと山井さんがいい流れで回してくれたんで、僕も持ってる力を全部出そうと思った。抜けたボールだけは投げないよう、ひたすら力を込めて投げた」と言う。5回2死までノーヒット。18日には山井が8回まで無安打投球を演じていただけに、エドガーに初安打を許すと、スタンドからは大きなため息が漏れた。「僕自身も期待していた」。だが、気持ちは切れなかった。6、8回には走者を背負った場面で、1発のある小笠原を2打席連続の空振り三振。マウンドで「ヨッシャー!」と叫ぶ声のボリュームは今季最大だった。

 昨年7月18日の横浜戦以来となる2ケタ奪三振で、プロ7度目の完封。9回には森ヘッドコーチからは「(救援陣は)皆(準備は)できている」と言われたが、迷うことなく「行きます」と続投を志願した。昨年は4度完封しただけに、お立ち台では「ちょっと時間かかり過ぎですね」と、苦笑いも浮かべた。

 今年はエースとして首位を争う巨人、阪神戦に起用されることが多く「そういうチームに投げるのは、落とせないっていうのが伝わる」と話す。巨人戦は昨年までわずか1勝。CSでは2者連続被弾を食らって日本シリーズ進出を逃し、オフには「来年は打たれてもマウンドで表情を崩さない」と誓った。そんな因縁の相手に、今季は5戦4勝。この日はピンチを背負っても、弱気な姿をまったく見せなかった。

 落合監督も「よく投げたと思う。最後、代えてくれと言ってくると思ったが、行くっていうから」と、1人で投げ抜いた吉見に目を細めた。チームは約3カ月ぶりの2位浮上。「まだ上はいますし、満足せず、取りこぼすことなく、投げる試合は必死に死にもの狂いで投げていきたい」。宿敵巨人を抜き、虎のしっぽももう目の前。逆転Vに向け、吉見が白星を積み上げていく。【福岡吉央】

 [2010年8月20日8時52分

 紙面から]ソーシャルブックマーク