プロ野球横浜の球団売却をめぐって、TBSホールディングスと住生活グループとの交渉が27日、決裂した。両社は26日まで交渉を重ねたが、最終的に折り合わなかった。大きなポイントになったのは、住生活グループが本拠地を横浜スタジアムから移転したいと希望したことだった。TBSは来季も球団を保有する方針を表明したが、買収に積極的な企業が現れれば交渉に応じる考えも示した。3年連続の最下位と低迷するチームは、今後も不安定な状態が続いていく。

 住生活側のプロジェクトチームでリーダーを務めるトステム溝口和美副社長(62)によれば、TBSとの交渉は26日まで及んだという。「諸条件が合わなかった。諸条件の中にはいくつもの項目がある。内容は言えないが、ギリギリまで、今日の朝まで私どもが検討した結果です」。この日の午前に住生活グループ潮田洋一郎会長(56)へ報告し、最終的に交渉断念という結論に至った。

 同グループの筒井取締役副社長が「8合目、9合目まで強い気持ちで登ってきたが」と語ったように、交渉は大詰めを迎えていた。順調に見えた交渉が決裂した原因として、本拠地問題が大きなウエートを占めた。TBS取締役相談役でもある若林貴世志オーナー(68)は「向こうは(移転に)執心しているからね」と明かした。

 プロジェクトチームは21日に、横浜球団の笹川取締役連盟担当をヒアリングした。その際、来年からの移転が可能か問うたという。同取締役は「時期的に難しいと答えました。それで話は終わった」。野球協約43条では、保護地域(本拠地を置く都道府県)の変更は10月末までに実行委員会の承認を得るよう定めている。時間に余裕はなかった。

 しかし、住生活側は来季からの移転を希望した。候補地には、大洋時代に24シーズンにわたって春季キャンプを開催した草薙球場(現在は改修中)がある静岡などが挙がっていた。だが、交渉にかかわった関係者は「行き先よりも横浜を出ることが優先だったように感じた」という。実際、横浜スタジアムとは一切の接触をしないままだった。同スタジアムの鶴岡博社長(71)は「こちらは、いつでも話す準備はあった。実際に話さなければ詳細は分からないはず」と言う。移転ありきは、買収で一新したい考えとともに、新しい施設づくりをグループで手がけたい思惑があったという見方もある。

 交渉において、住生活側に譲れない条件があるのは当然のことでもある。ただ、本来は水面下で行われる交渉が表面化したため、交渉決裂は今後にも大きな影響を及ぼしそうだ。TBSが球団を売却したい意向も広く知られることになった。ファンからすれば、TBSが球団を見切ったと受け取られる。

 TBSホールディングスの財津敬三社長は「大変申し訳ない話だ。(本来は)知らない間に始まり、知らない間に終わるものだが、表面化して心配をかけたことについて、残念だし、責任を感じる」と語った。尾花監督の続投、横浜スタジアムのフランチャイズ、そして親会社のTBS。すべては事実上の「暫定」として、来季に向かう。

 [2010年10月28日9時24分

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