161キロ右腕のヤクルト由規投手(21)が、ダルビッシュ級に進化して最多勝を目指す。沖縄・浦添市民球場で9日、今キャンプ初のフリー打撃に登板した。昨秋から取り組む新球ツーシームを解禁し、59球を投げて安打性の当たりを9本に抑えた。球場を訪れた元監督の古田敦也氏(45)は、ツーシーム習得で飛躍的に勝ち星を増やした日本ハム・ダルビッシュの姿を由規に重ね合わせ、最多勝争い参戦に太鼓判を押した。

 由規が今季初めて打者に相対し、新球を解禁した。昨秋から取り組むツーシーム。最速161キロの直球にこれまでのカーブ、スライダーなどとは逆のシュート系の変化が加わる。3人の左打者に対して各2~3球ずつ、約10球。芯を外して内野ゴロを打たせた。「何球かいいボールがあった。いい感覚を忘れないようにしたい」と手応え十分の初投げだ。

 投球直前には、球場を訪れた元監督の古田氏と再会した。古田氏は「ダルビッシュもいいストレートとスライダーがあったけど、ツーシームを投げるようになってから、すごく勝てるようになった」と話す。06年からツーシームを本格的に投げ始め、05年の5勝から12勝と大ブレークした球界のエースと重ねた。

 昨季は日本人最速の161キロをマークし、初の2ケタとなる12勝(9敗)を挙げた。得意のスライダーをさらに生かすため、左打者の外角へ逃げ、右打者の内に食い込むツーシームの習得に昨秋から取り組んできた。打席に立った川端は「(ダルビッシュのは)もう少し速い感じ。由規のはチェンジアップに近いシュート系。回転が少なくて、ボールが逃げていく」と話し、武内は「外に沈んでいく感じ。右にしろ、左にしろやっかいなボールになる」と驚いた。

 古田氏からは新球のポイントは「低めを狙え」と金言を受けた。通常の変化球より抜け球になりやすいツーシームで高めを狙うと、右打者の場合、死球になる可能性が高くなる。07年ドラフトでは5球団競合の末に、自らを引き当ててくれた「恩師」。由規は「アドバイスをいただいて、曲げようと思わず、低めを狙って投げた。意識したら、割といいところに決まった」と早速実行した。

 小川監督は石川、館山、村中、由規の4人を開幕投手候補とする。「誰が開幕投手になっても遜色はないんじゃないかと。キャンプの終わりには言いたい」と競争心をあおった。古田氏は「15勝して最多勝を目指してほしい。変化を嫌う人は成長しない。チャレンジすることが大事。(ツーシームを)会得すれば最多勝争いできる」とエールを送った。

 由規はフリー打撃に登板後、ブルペンに入ってさらに約25球投げた。重みのある直球で、最大の魅力への鍛錬も欠かさない。初の開幕投手については「目標としては、そこを目指していきたい。そんなに意識はせずに」と言う。初実戦は17日の練習試合、韓国サムスン戦の予定。控えめな言葉の中に、確かな自信をにじませた。【前田祐輔】

 [2011年2月10日8時51分

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