<オープン戦:ソフトバンク0-0阪神>◇3日◇福岡ヤフードーム

 統一球、打たせるつもりが、三振ぎり…字余り。阪神の開幕投手候補、久保康友投手(30)が、オープン戦初登板となったソフトバンク戦で、4回無失点と貫禄を見せた。4回、多村に統一球をどこまで飛ばされるか試そうと投じた直球が、コースがよすぎて見逃し三振。思惑が外れるほどの仕上がりのよさで、開幕OKを見せつけた。

 良すぎちゃって、困っちゃう。開幕投手候補の久保は、オープン戦初登板を終えて苦笑いだった。

 「いいところに行きすぎて、まともに振れなかったと思う。いいことなんだけど、やりたいことができなかった」。

 4回1死走者なしの場面だ。昨季27本塁打の多村に対して、3球連続直球を投げ込んだ。統一球で長距離打者の飛距離を確認する狙いがあった。だが、すべてが際どいコースに決まり見逃し三振に仕留めてしまった。

 もはや、ただ抑えることだけでは満足できない。春季キャンプでは、山口投手コーチをして「投げる哲学者」と言わしめる。統一球の飛距離テストはならなかったが、しっかり収穫も手にした。

 「今日は調子はよかった。ボールも思った通りに操れたと思う。ドームは変化が安定しているので、どう動くかも分かった。でも、最後はフォークに頼ってしまいました」。

 研究しながら、結果にもこだわりを見せる。2回1死満塁。9番細川を、2ボール2ストライクから127キロフォークで空振り三振。1番川崎には3球勝負で、決め球はまたしてもフォークだった。4回3安打無失点。昨季チームトップの14勝を挙げ、信頼を勝ち取った。大黒柱がチームの無失点リレーを途絶えさせるわけにもいかなかった。

 ずばぬけたボールを持っているわけではない。器用にボールを動かしながら、打者のタイミングを外す投球。決して派手さはない。試合中に着用するグラブは黒。見た目からも「求道者」のオーラが漂う。

 そんな久保にも、遊び心がある。前日の試合前練習で使用していたのは、茶色ベースにピンクのラインが混ざった特注グラブ。メーカーに「できるだけ派手にしてください」と注文した。「まだまだ、もの足りないですね。もっと派手で良いです。これも、反動ですかね」。日々の野球道を突き詰める右腕は、いたずらっぽく笑う。

 開幕まで1カ月を切った。実戦でデータを蓄積し、日々感覚を研ぎ澄ます。

 「開幕にベストをもっていきたい」。

 いざ開幕すれば、良すぎて困ることは何にもない。【鎌田真一郎】