オレ竜に加わった仕事人・佐伯貴弘内野手(40)が30日、阪神との練習試合(京セラドーム大阪)で真価を発揮した。4-4同点の8回1死二塁。阪神の左腕岩田に、落合監督は敢然と代打佐伯を告げた。左対左は投手有利-。セオリーを打破する采配に佐伯は技術で応えた。カウント1ボール2ストライクから直球を中前へ。勝利を呼ぶ勝ち越し適時打。攻撃パターンの1つが見えた瞬間だった。

 「ああやって左対左の場面で使ってもらったわけですから。結果が出てよかった。左は苦手という自覚は自分にはない」。

 佐伯は実感を込めた。昨オフ、横浜を自由契約になった佐伯を獲得した落合監督は、じつは当時からこの形を胸に秘めていた。

 「佐伯は代打だけのためにとったわけじゃない。投手によっては先発で使うかもしれない。相手が右でも左でも関係なく打てるだけの経験も実績もある」。

 岩田は過去1勝7敗とオレ竜にとって天敵中の天敵。ところが佐伯は通算打率5割3分3厘と打ちまくっている。同じくチームが3勝11敗(過去3年間)と苦手にしているヤクルト館山も佐伯は対戦打率5割(同)を誇る。代打の切り札としてだけでなく、左右問わず使える「天敵キラー」として計算していたのだ。

 「僕が打てば、こちらの要求に応えて全力で投げてくれる打撃投手の方たちへの恩返しにもなるから」。

 何度も打撃投手への感謝を口にした。試合前のフリー打撃、佐伯はあえて打ちにくい100%の速球を要求する。スタッフはそれに全力で応えてくれる。小さな工夫と努力を積み重ねてセオリーを打破した打者・佐伯と、その技量を使いこなす落合采配が勝利につながった。【鈴木忠平】