<楽天3-2オリックス>◇15日◇甲子園
楽天田中将大投手(22)が今季初登板を完投勝利で飾った。思い出深い甲子園で行われた、今季初の主催試合で先発。3回まで1人の走者も許さない完璧な立ち上がりをみせた。4、6回と2死から、いずれもT-岡田に適時打を許して失点したが、粘り強く投げて7安打2失点。本拠地の仙台から遠く離れたホーム開幕戦で白星を挙げた。3勝1敗とした楽天は、開幕4戦目ながら首位に立った。
最終回のマウンドへ。3万を超える瞳と拍手で送り出された。いつもは敵地の聖地もこの日ばかりは田中の城だった。代替ホームに1万5562人が集まり、「どうしても勝たないといけない」と沸き立った。1死一塁。北川を二ゴロ併殺に仕留め腹の底から叫んだ。「甲子園でヒーローインタビューを受けるのは、ちょっと変な感じですね」。110球は報われた。
開き直った。「フォームのバランスがバラバラ」だった序盤から中盤。4回に続き6回にもT-岡田に適時打を浴び勝ち越された。だが、直後に味方が逆転し「スイッチが入りました」。終盤は直球中心にグイグイ押して逃げ切った。
右腕を支える、いくつもの目があった。“信頼”の目。「甲子園は田中に」と、当初の開幕投手から、あえてローテーションを変更した星野監督がいた。「任せるしかなかった」と100球を超えていた9回も迷いなく続投を決めた。
“分析”の目。「コースを狙いすぎるな。ベース板の上を通れば勝負できる」と助言した佐藤投手コーチと捕手嶋がいた。田中は「それまで打者と勝負していなかった。あれで向かっていけました」と感謝した。
実は“心配”の目もあった。「責任感が強い子。東北のために、と思いすぎて、今日は打たれるんやないか」。少年野球で指導した昆陽里タイガース・山崎三孝監督(65)が、田中に内緒で一塁側ベンチ上にいた。4番も打っていた田中少年を述懐し「好機では、ようファーストフライ。『自分がかえすんだ』と責任感から力んでたんですわ」。
あのときもそうだった。06年、高3の夏決勝再試合。1点差の最終回、早実・斎藤(現日本ハム)の前に空振り三振で最後の打者になった。5年の時を経て楽天の顔となり、恩師の心配は杞憂(きゆう)に終わった。田中は「高校野球では一塁側で負けました。今日は勝てて良かった」とおどけ、山崎監督は「成長しましたね」と目を細めた。
数々の目の中心にいる田中は、ファンに“尊敬”の目をむける。8日に宮城県内の避難所を訪れた。「自分の目で見て、何が出来るか考えたい」と繰り返してきた22歳は生の現実を直視した。そして、「被災された方に強い気持ちをもらいました。その強い気持ちを出していく。絶対に勝ちます」と決意した。お立ち台で最後に叫んだ「東北の皆さん、やりました!」の甲高い声。800キロ先のみちのくへ、純な思いは間違いなく届いた。【古川真弥】



