<楽天3-2オリックス>◇15日◇甲子園

 中堅定位置やや前に、岩村が高々と飛球を打ち上げた。6回1死、三塁上には同点適時三塁打を放った山崎武司内野手(42)がいた。一塁側ベンチから、星野監督が「戻って来い!」と目いっぱいのジェスチャー。巨漢がフライングぎりぎりで絶好のスタートを切った。返球がそれ立ったままゴール。42歳がダイヤモンドを駆け抜け決勝点をもぎ取った。

 特大三塁打を放ち肩で息をしていたが、休む間もなくベンチへたどり着いた。山崎は「高~く打ってくれたのが良かったよ。消極的、はいかんからねぇ」と笑顔で細い目がなくなっていた。星野監督が「何十年ぶりに見たぞ。タケの激走」と大喜びするのも当然だった。「暴走はダメだが」と断った上で、走塁について「アウトのタイミングでも、『行けぇえ~』ってな。突っ込んでアウトなら文句言わん。悔いが残らないし、相手はいやだから」と定義してる。長いつきあいになった教え子が、甲子園球場の黒土で、体いっぱいに表現してくれた。

 8年ぶりに帰ってきた。「いっぱいのお客さんの前でプレーさせてあげたいし、テレビで応援する方にもにぎやかで元気な楽天を見せてあげたい」。ホーム開幕が決まると「営業マンになる」と宣言し、自らチケットを売った。1万5562人集まったファンは、虎の聖地で行った試合としては大健闘。監督は「関西の人は優しいな」と苦労を傍らに言った。昨年10月、「僕には夢がある。甲子園で阪神と日本シリーズを戦う」との名言を残して去った聖地。半年後、黄色とクリムゾンレッドで真っぷたつに割れたスタンドでタクトを振るう。【宮下敬至】