<楽天4-3日本ハム>◇23日◇ほっともっと神戸

 楽天ランディー・ルイーズ内野手(33)がサヨナラアーチを放った。23日の日本ハム戦(ほっともっと神戸)で3-3の同点で迎えた9回、谷元から左中間に1号ソロ。開幕11試合目で、星野監督に初めてのサヨナラ勝ちをプレゼントした。打率0割台と低迷していた絶不調助っ人に待望の1発が出て、元気のない打線に光が差し込んだ。

 悩みが深かった分、さまざまな思いが交錯した。今年初めて、ダイヤモンドをゆっくり1周したルイーズは、考えごとをしていた。「最初はうれしかったけど、同時に明日からしっかり準備してやらなきゃいけないことがたくさんあると思って…」。仲間が待ち構えるホームに来るころには、ヒーローとは思えない複雑そうな表情をしていた。「もっと喜べ!」「スマイル、スマイル!」の声と手荒い祝福を受け、ようやく笑顔になった。

 神経質になっていた。まともにバットに当たらなかった。来日2年目で相手にも研究され、ボールになる変化球をことごとく振らされた。開幕2戦目に2本目の安打を打ってから、24打席連続で凡退していたが、愚直なまでのフルスイングで自分を信じた。同点の9回。谷元のスライダーが曲がりきらずに真ん中へ。これまで仕留めきれなかった失投をぶちかまし、左中間席へ来日初の劇的サヨナラアーチを運んだ。

 必死だった。打撃練習では、ゴムチューブを腕に巻きつけて脇を締めて打つ意識を強めた。「今まで通りのスイングを取り戻せた」と“緊縛打法”の効果を口にした。「何かを変えよう」と、いつもは足首まで下げているユニホームのズボンを膝まで上げ、クラシックスタイルで試合に臨んだ。夜の試合で、終盤になるにつれて冷え込み「最後の打席は寒くて戻したけど、これからは短いパンツをオーダーしようかな」というジョークも飛び出た。

 頼もしい友人が1軍に合流した。抑え候補の新外国人サンチェスだ。米国にいた時からの飲み仲間と話し、ストレスが軽減された。サンチェスは英語が苦手でスペイン語しか話せないため、前日22日の会見にはなんとルイーズが同席。報道陣の質問を英語からスペイン語に訳す「通訳」として活躍した。助っ人勢が食事会場で歓迎会を開いた時は「サンチェスのヒーローインタビューになったら、ルイーズが通訳で一緒にいくしかない」と一同で爆笑した。そのお立ち台に上がり「最高の感触でした」とスマイルをつくった。

 連敗が3で止まった星野監督は「いくとは思わなかった。パワーはある。いってホッとした」と胸をなで下ろした。不振にあえぐ打線の象徴だった助っ人の1発で、再び貯金生活に入った。【柴田猛夫】