<ソフトバンク5-3ロッテ>◇24日◇熊本

 8失点KOの屈辱晴らした!

 ソフトバンク摂津正投手(28)が先発転向後、初勝利をあげた。熊本でのロッテ戦で、5回途中8失点KOされたプロ初先発の西武戦(16日、福岡ヤフードーム)以来2度目の先発登板。8安打を許したが、3失点と粘りの投球で8回まで投げ抜き、白星を手にした。5-3の勝利に貢献しチームは4連勝。首位をがっちり守った。

 ホッとした。摂津は、思わず細川と右のこぶしを合わせて喜んだ。7回、サブロー、大松に連打を浴び1死一、二塁。リードはわずかに1点。7番金泰均への初球、139キロの直球を投げ込む。内角高めのボール球。だが、気迫で上回った。投併殺に抑えピンチを脱した。プロ最多の103球で、最多の8イニングを投げ抜いた2試合目の先発で白星をつかみ取った。

 「先発の難しさを本当に感じている。1戦目はふがいない投球だったので、切り替えて投げた。低めをついて何とか抑えることができた。5点も取ってもらって感謝している。本当にうれしい」

 普段は寡黙な男が喜びを爆発させた。2年連続で70試合以上に登板し最優秀中継ぎ投手の座に輝いた。今季から先発に転向。だが、そのデビュー戦は散々だった。西武中村に3ランのおかわりを食らうなど、8失点で5回途中KO。昨季までのリリーフエースが、屈辱にまみれた。

 先発転向後「このまま先発でダメだったら、どうなるのか」「杉内さんの後に投げるのはプレッシャーがかかる」と不安ばかりが頭をよぎった。しかし、屈辱が逆に切り替えるきっかけとなった。「やるしかないですね」と開き直って手にした白星だった。

 尊敬する細川のリードを信じて投げた。JR東日本東北に所属していた社会人2年目の夏。20歳だった摂津は東京での公式戦後、当時西武で1年目の細川と食事をする機会があった。卓越した野球理論に感動し、バッテリーを組んでみたいと願った。夢は細川が西武からFAでソフトバンクに加入し実現。約9年ぶりの再会で意気投合した。先発初勝利に導いてくれた好リードにも、心から感謝した。

 最強リリーフ陣SBMを解体してまで、右の先発の軸を求めた秋山監督は「ピンチでよく粘った。先発としての体が、かなりなじんできた」と目を細めた。だが、現状に満足しない。本人は「まだまだ反省するところはたくさんある」。細川も「もっとよくなる」と言った。忘れられない1勝をあげた摂津。最優秀中継ぎ投手から右のエースとなり、リーグ2連覇に貢献する。【奈島宏樹】