<楽天3-1オリックス>◇30日◇Kスタ宮城

 「ミスターダブル」で楽天が今季初の3連勝だ。新加入の松井稼頭央内野手(35)が2二塁打1得点で、リードオフマンの役割を全う。守備でも3回2死満塁のピンチで、三遊間深くのゴロを素早くさばき二塁封殺とした。現役選手で通算二塁打数は15位だが、約4・3試合に1本という断然トップのペースで二塁打を打ちまくっている。星野楽天の金看板が攻守でけん引し、本拠地で連日の接戦を取った。仙台から一気に加速する。

 松井稼の白木バットが本塁上の空間を切り裂いた。7回1死走者なし。オリックス吉野の高め145キロ。けれん味ないスイングで、今度は打球が左中間をズバッと切り裂いた。滑り込むまでもなし。5回と合わせ2本目の「スタンダップ・ダブル」。二塁上で初めて聞く地元ファンの声に「盛り上がる」と感謝した。続く聖沢の二塁打で本塁生還。貴重な3点目を踏んだ。

 「1番として何も出来てなかった」が本音だった。5試合ぶり安打で、日米通算400二塁打到達。日本では現役15位276二塁打だが、約4・3試合に1本は現役20傑で最高の量産ペースだ。走力あって実現する二塁打こそ「ホームラン打者じゃない」と話すバットマンの真骨頂。長い付き合いの相棒で築いた。西武時代からバットは常に硬いメープル材。「しならせてとか、乗せてとかいう感覚が分からない。パチーンとぶつける感じ」。打感を大事に、外野手の間を破る。統一球対策で1度はバットを20グラムほど重くしたが「違った」。手慣れた900グラム弱で戦っている。

 守りでも魅せた。2-1の3回2死満塁。バルディリスの三遊間深い当たりに「二塁しかない」と反時計回りに回り込み、即座に二塁送球。星野監督も「大きかった」と2度繰り返すプレーで同点を防いだ。

 なぜ東北を選んだのか。真っすぐな姿勢があった。他球団のオファーもあったが「FAで帰るんじゃない。楽天は3Aでも見てくれた」という感謝の念。そして「歴史をつくろう」という星野監督の言葉が響いた。「日本にいたころ、まだ楽天はなかったんだよね」。米国の代理人とは契約更新せず自ら交渉した。お金じゃない。気持ちで戦う一本気な男は「明日もある」。キリリと前を向き、4連勝を誓った。【古川真弥】