<日本ハム1-0広島>◇29日◇札幌ドーム

 久々の援護は、ベンチに腰を下ろして見届けた。5回に今浪隆博内野手(26)が適時打を放つと、武田勝投手(32)はポンと両手をたたき、走者を迎えるハイタッチの輪に加わった。自身の登板試合では実に6戦ぶりの援護点。5試合連続完封負けという、2リーグ制で初となる珍事が終わった瞬間でもあった。だが、武田勝は「(野手には)気にしてやってほしくはなかった。これで全員が解放されたと思う」と、自分よりも周囲を気遣った。

 7回5安打無失点の投球で、ようやく手にした今季3勝目だった。「自分の投球はできていたので、いつか勝てるという気持ちはあった。いつも先に点を取られているので、そこだけは意識しながら。1点の重みを感じながら投げました」。この日も生命線は低めに制球されるチェンジアップ。5回2死満塁のピンチに梵を捕ゴロに仕留めると、7回1死二塁の場面でも、石原、会沢を同じボールで2者連続三振に斬った。

 防御率1・64ながら、リーグワーストタイの5敗。勝ち運に見放され続けたが、必死な打撃陣の心情を察し、努めて明るく振る舞った。常に笑顔を絶やさないように心掛けたため、芝草投手コーチが「あまりにも勝てなくて頭がおかしくなっちゃったのかと思った」ほど。苦悩の日々も、笑いに変えた。「(清めのため)自分の体に塩をまこうと思いました…。でも、洗うの面倒くさそうでやめました」。「夢も見てません。寝たらすぐ朝が来るんで」。「(流れを変えるため)道を変えたりするのも好きじゃないです。でも、勝手に変わってることはありますよ。タクシーの運転手さんが…」。負の連鎖を、笑いで吹き飛ばした。

 梨田監督は「あんまりカッカすることなくね。立派だと思う。まだまだたくさん借りがある。援護していきたい」。笑う門には…交流戦初のカード勝ち越しと、最多貯金9が来た。【本間翼】