<日本ハム1-0阪神>◇1日◇札幌ドーム

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)が、記録ずくめの1勝だ。阪神戦で9回を4安打8三振の完璧な投球を見せ、今季3度目の完封で両リーグトップの7勝目を挙げた。5月10日の楽天戦から続ける連続イニング無失点も35まで伸び、東映時代の54年に米川が記録した球団記録に並んだ。ダルビッシュの7戦7勝は自己最多。チームもこれで4試合連続の完封勝利でパ・リーグタイ記録をマークした。4連勝で貯金も今季最多の11となった。

 最後まで見下ろした。ダルビッシュが、ビッグネームが並ぶ猛虎打線を力で眠らせた。剛腕でつむいだ103球で使命を遂げた先に、重い1勝が待っていた。自身プロ入り初の7戦7勝、35イニング連続無失点。破竹の勢いのエースは騒がず、おごらず、冷静だった。記録ラッシュにも「1人、ひとり力のある打者なので慎重にいった」と、あっさり受け流した。

 豪快に主導権を奪った。立ち上がりから2回まで、打順上位を含む打者6人。すべて初球に150キロ超の速球を選択した。圧倒的なパワーで宣戦布告し、緻密に試合を組み立てた。「力を入れましたね。今日の中では…」という要所は、3回1死一塁。二盗と暴投で三進を許し、まず柴田をまず空振り三振。ギアを1段上げ、難敵マートンを迎えた。

 初球。国内自己最速タイ、今季最速156キロで1ストライクを奪いスイッチが入る。4球連続直球勝負で空振り三振。「打ち取れればいいな」との軽い思考で打破し、自己レコードへつなげた。無四球完封はプロ初、2試合連続完封で両リーグ単独トップ7勝目。パ・リーグ、球団タイの4試合連続完封勝ちの快挙に、花を添える離れ業だった。

 進化を、また証明した。その土台は昨季より約10キロ増の体重100キロ前後を維持する肉体改造。見た目だけではない、排気量を上げる舞台裏も、すごみあふれる。試合前の選手サロンでの食事では、鳥の空揚げを皿に山盛り。脂分の多い衣をきれいに排除し、良質なタンパク質を摂取。ゆで卵も黄身を受け付けず、卵白だけを黙々と口へ運ぶという。

 時に欲求に従い、焼きそばにマヨネーズをかけるなどの「暴食」もある。その後の食事でカロリーなど引き算して、フラットに戻すという。プロ入り3年目からエースに君臨し、今季で7年目。着実にレベルアップしながらも毎オフ、過去を清算し、エース道を磨き上げてきた。阪神ナインの絶賛の嵐も「そんなに大した投手じゃない」と苦笑して一蹴した。ストイックな探求心の積み重ねがレコードラッシュの1日に結びついた。ダルビッシュが野球にささげる人生の集大成は、もっと先にある。【高山通史】