<広島0-1ソフトバンク>◇5日◇マツダスタジアム

 ソフトバンク摂津正投手(29)が、プロ入り初完投を完封勝利で飾った。広島打線を4安打に抑え8奪三振。3連勝で今季5勝目を挙げた。抜群の制球力を武器に初回の1点を107球で守りきった。2連勝で交流戦優勝マジックは6。今季から先発に転向した右のエースが、チームを加速させ、最短なら10日に2年ぶり3度目のVが決まる。

 最後は宝刀で仕留めた。1点リードの9回2死。摂津は外角低めのシンカーで4番トレーシーを投ゴロに打ち取った。8度目の先発で初完投をシャットアウトで飾るとポーカーフェースが緩んだ。小久保に頭を軽くたたかれ、秋山監督と両手で握手した。

 「完投したかったので、完封できて良かった。うれしい。先のことは考えずに、気持ちを切らさないようにした。とにかく1回ずつ投げようと思っていた」。

 援護は初回の1点だけ。それでもスイスイと9回を107球で投げ切った。適時打もない「スミ1」ながらチームは2連勝で貯金は今季最多の18。秋山監督も「踏ん張ってくれたね」と右のエースに最敬礼だ。

 完投には人一倍こだわりがあった。入団から2年連続70試合に登板した不動のセットアッパーから先発に転向。開幕当初は首脳陣から「100球前後を交代のメド」と言われた。これまでの最長イニングは4月24日ロッテ戦の8回。「自分は最後まで投げるつもり」とスタミナと実績を積み上げると球数制限は解除され、先発転向で掲げた1つの目標を達成した。

 参考にしているのは「球種が似ている」と自己分析する西武の岸だ。勝負どころでのカーブの使い方を参考に、昨季まで岸とバッテリーを組んでいた細川のリードを信じた。5回にカーブを岩本に打たれ左翼フェンス直撃の二塁打にされたが、7回の次打席ではカーブを2球続けて追い込み、最後はシンカーで空振り三振を奪った。

 高山投手コーチは「今日は摂津に尽きる。文句のつけようがない。カーブをあえて使ったのも良かった」と称賛。細川も「コントロールでしょ」とうれしそうだった。

 それでも摂津が満足することはない。「まだまだ。これを何回もやっていかないといけませんから」。マウンドに上がるたびに完投を期待される杉内、和田の両エースのようになるために、これから何度もこの瞬間を味わうつもりだ。

 シーズン43試合目で早くも12球団トップの11完投。10日にも交流戦Vが決まるソフトバンクの勢いは止まらない。【奈島宏樹】