＜オールスターゲーム：全セ９－４全パ＞◇第１戦◇２２日◇ナゴヤドーム

　地鳴りのようなどよめきが起きた。日本ハム斎藤佑樹投手（２３）が、肩で息をしながらブルペンを飛び出した。５回１死だ。７回から３番手の予定が、武田勝の乱調で緊急登板。「すごく緊張した。スクランブルというのもあったし」。大きくほおを膨らませて深呼吸した。

　「マサルさんがあんなに打たれるなんて」との動揺や力みからか、生命線の低めの制球に苦しんだ。２安打を浴びながら無失点。続く６回。先頭打者の早大の先輩、ヤクルト青木に左前打を許したが、その前の打席で３ランを放ったヤクルト畠山を、外角低め１４１キロの力勝負で二併殺。横浜村田は遊ゴロに仕留め、１回２／３を３安打無失点と及第点デビューだった。

　緊張でガチガチの試合前、楽天田中が「緊張しているみたいだった」と察知して声を掛けてくれた。「雰囲気に慣れたら大丈夫。オレも最初はそうだったから」。０６年夏の甲子園決勝で、伝説の延長再試合で投げ勝った盟友の言葉で、少し肩の力が抜けた。登板後にはテレビにゲスト出演していた田中に「斎藤投手どうでしたか？」と他人行儀に感想を聞かれ、「ありがとうございます」と敬語でやり返し、感謝した。

　わずか３勝で選ばれた１年目での球宴。人気先行と自覚し、周囲の関係者によれば、当初は喜びの半面、戸惑いの色を隠せなかったという。だが大役を遂げて「投げられたのはありがたい。楽しかった」と底抜けのスマイルを見せた。スーパールーキーでしか知り得ない重圧、葛藤を乗り越えての夢舞台。佑ちゃんが、また今後の糧になるドキドキの初体験を終えた。【高山通史】