<ソフトバンク1-3楽天>◇27日◇福岡ヤフードーム
エースが帰ってきた。右肩痛の癒えた楽天岩隈久志投手(30)が、5月17日の巨人戦以来となる先発マウンドに立ち、ブランクを感じさせない制球力で7回を1失点。4勝目を挙げた。雌伏の時を無駄にせず無駄のない投球フォームで、強打のソフトバンク打線を淡々と封じていった。チームは一夜で4位復帰。「迷惑かけた分を取り戻す」と意気込む岩隈を軸に巻き返す。
岩隈の復調は1球で分かった。1回、先頭川崎への初球。外角低めいっぱいに120キロスライダーを収めた。普段と変わらぬ制球の鬼がマウンドにいた。追い付かれなお1死満塁の6回。多村を外角フォークで泳がせ遊ゴロ併殺。ベース板に変化球をまぶし、ソフトバンクを涼しげにかわした。「最後の登板で無理をして、遠回りした。でも勉強になりました」。5回を39球で切り抜けた5月17日巨人戦。カーブを軸にバットの芯を外しまくった。離脱の代償に学んだ投球術。ただでは転ばなかった。
けがの功名はまだある。投球フォームが洗練された。右肩痛は投手の職業病。岩隈は07年あたりから違和感を覚え、同年オフには右肘を手術した。肘と肩の故障は連動して発症してしまうことは定説。だが今、先端の医療現場で研究が進んでいるのは、投球動作における股関節と肘、肩の連動性だ。近年、学会や講演で多く取り上げられているテーマ。股関節を巧みに使えば、故障は大きく軽減するという理論がある。
岩隈の復帰登板をテレビ観戦していた担当医は「以前に増して無理がない、患部に負担のかからないフォームで投げていた。下を柔軟に、大きく使っていた」と指摘した。確かにこの日の岩隈は長い左足の回旋動作が大きく、回旋の頂点で左足の爪先がピンと立っていた。股関節を意識して動作をスタートし、下半身の大きな力を利して投げた。
2カ月半のファーム調整。「しっかり治すこと」を主眼に走り込みに徹した。加えて今季冒頭から継続して取り入れた練習もあった。手塚パフォーマンスコーディネーター提唱の「超・内股歩き」。股関節の柔軟性を高める狙いがあった。主に野手に対しての指導だったが岩隈は積極的に聞き、暇を見つけては球場外周をクネクネと歩き回っていた。腕を振るのではなく、腕が自然と振れる。投手として理想のフォームを手中に収めたのは、地道な努力と探求心だった。
「ボールは大したことないかも知れないが丁寧に。いいコースにいった」と岩隈。繊細さを増して舞台に戻ってきた。【宮下敬至】



