<ヤクルト2-0巨人>◇29日◇福島

 ヤクルト村中恭兵投手(23)が、巨人打線を3安打無失点に抑え、プロ入り初完投を初完封で飾った。今季から習得したチェンジアップと直球のコンビネーションを主体に、9回を109球で投げ切った。右脇腹肉離れで2カ月以上戦列から離れたが、これで復帰から2連勝。チームはリーグ最速で40勝に到達し、小川監督は昨年の監督代行時から、監督通算99勝として大台に王手をかけた。

 村中が投じた外角チェンジアップが、ボールゾーンに逃げる。9回1死、初完投初完封まであと2アウトの場面で、巨人の4番長野を迎えた。2ストライクと追い込むと、迷わず3球連続のチェンジアップ勝負を選択。ようやくバットに当てた打球が、力なく村中の前に転がった。

 意外にも、これまでプロ6年間で62試合に登板し、完投すら0だった。試合を終えると、控えめながらも、珍しく両手を上げて喜んだ。巨人打線を109球で3安打に封じた。「まだ実感が湧かないですけど、課題だったことができた。少しずつ成長していると思う」とはにかんだ。

 昨季は11勝を挙げたが、球数が多く、どうしても9回を投げ切れなかった。課題克服へ、オフはチェンジアップ習得に乗り出した。村中といえば直球とフォークのイメージが強いが、この日は「フォークより落ちた。8対2ぐらいでした」(川本)と、通常と配球を逆転。15日の復帰戦より、切れが増していると判断し、軸のボールとして初めて使った。村中も「今日はいい感じでタイミングを外せた」と手応え十分だ。

 はにかんだ笑顔は、タレント「さかなクン」似と評判。オフの自主トレ期間中は、本家が山梨・西湖で70年前に絶滅したとされていたクニマス再発見の立役者になった。ならば、時を同じく開発した新球は「クニマスチェンジ」と命名。勝負どころで、新球を思う存分解禁した。

 これで右脇腹肉離れからの復帰後、巨人に2連勝。小川監督は「これからの村中のことを考えても、巨人戦で完封すれば自信になる」と9回のマウンドに送り出した。指揮官の気持ちに結果で応え、監督通算99勝目をプレゼント。勝負の後半戦へ、大きな自信をつかむ1勝だった。【前田祐輔】