<西武7-2オリックス>◇30日◇西武ドーム

 このカードは遺恨だけじゃないんです-。左中間スタンドに突き刺さった打球は、そう言いたげだった。中村剛也内野手(27)がオリックス戦で28号2ランを放った。1回2死一塁、初球。中山の直球をこの試合のファーストスイングで仕留めた。貴重な先制弾にも「まあ、普通」。連敗ストップの立役者はいつも通り素っ気なかった。

 11日の試合で中島への死球をめぐって乱闘騒ぎとなり、遺恨カードとして“認知”され、両監督がクローズアップされがちなオリックス戦だが、このカード12戦11発。岡田監督の歯ぎしりが聞こえてきそうなキラーぶりだ。「たまたまホームランの出る周期でオリックス戦があるだけじゃないですか?

 巡り合わせだと思う」ととぼけるが、金子千や岸田ら相手チームの一線級も打ち込んでいるだけに価値が高い。

 前日29日の試合で後半戦初アーチ、これで2試合連発とキングのバットに再点火の気配が漂う。飛ばないボール相手に1人旅を続ける主砲。2年ぶりに出場したオールスターでは、立場の変化を実感したという。「人から聞かれることがメッチャ多かった。(日本ハム)中田翔にはバット1本取られたし」と冗談めかして振り返っていた。

 いまや追われる側にいる27歳を、中日落合監督はこう評していた。「技術がある人間は砲丸投げの球だってホームランにできるんだよ」。分かるような、分からないような独特の言い回し。それでも、伝え聞いた中村は即答した。「何となく分かる。『統一球も関係ない。ボールを言い訳にするな』ってことじゃない?」。超一流から送られた“エール”と解釈した。夢の舞台でもらった刺激と金言。それらを胸に刻み、今度は自分が、夢を乗せた放物線を描き続ける。【亀山泰宏】