<ヤクルト2-0横浜>◇18日◇神宮

 「オ・レ・は・ジャイアン~♪」~。「ドラえもん」のガキ大将キャラをニックネームに持つ、プロ3年目のヤクルト赤川克紀投手(21)が待望のプロ初勝利。横浜打線を6回途中4安打無失点に封じ込んだ。大方の先発予想は館山だったが、「奇襲先発」が見事にはまった。1戦目は「カツオ」石川、最大9点差を追いついた2戦目は「バカボン」七条で横浜3連戦を2勝1分けで乗り切り、5カードぶりに勝ち越した。

 ユニホームのポケットに、大事そうにウイニングボールをしまい込み、赤川が右翼スタンドに向かった。ファンの大歓声に手を上げて応える。夢に見たプロ初勝利の瞬間。「チョー緊張した。幸せです」とかみしめた。

 今季2度目の先発は2日前に伝えられた。11試合の登板で防御率2・29と、中継ぎで成績を残してチャンスをつかんだ。立ち上がりから「ロングリリーフのつもりだった」と飛ばす。2回2死満塁のピンチは横浜石川をフルカウントから143キロの直球で空振り三振に切った。「思い切り腕を振って投げた」。最速144キロで6回2死まで4安打無失点に抑え、プロ初勝利をつかんだ。

 宮崎商から、08年ドラフト1位で入団した。大きな期待を受けながら、2軍暮らしが長く伸び悩んだ。2年目はフォームに悩み、高校時代147キロをマークした直球は130キロ台に落ちた。「いろいろ悩んで丸1年かかりました」。甲子園のビデオを見返して、試行錯誤を繰り返した。オフは、2年連続でソフトバンク和田と自主トレを行った。フォームを動作解析し、腕を下げ過ぎず、下半身を使う理想のフォームに近づいた。

 記念のボールは両親に贈ると決めた。184センチ、92キロの堂々たる体格で、愛称は「ジャイアン」。新人七条の「バカボン」に続き、新アニメキャラの誕生だ。「何で呼ばれるんだか分からないんですけど。プロに入って言われるようになりました」と、はにかんだ。

 前西武工藤、ソフトバンク杉内ら歴代名左腕が付ける背番号「47」を背負う。「まだ3年目。これからどんどん勝ち星を積み上げていきたい」と誓った。05年村中、06年増渕、07年由規と、高卒ドラフト1位がいずれも活躍。ここに赤川が加われば、盤石の若手投手陣がさらに強固になる。【前田祐輔】