俺はいつでもいく!

 阪神藤川球児投手(31)が今日からの巨人3連戦を前に、今季初の「イニングまたぎ」解禁へ意欲を示した。シーズン終盤の勝負どころに向け、チーム方針で疲弊を避けるための1イニング限定起用が続いていた。シーズン残り50試合。火の玉ストッパーは佳境モードへの心構えを整えた。

 シーズン残り3分の1。いよいよ球児の体内エンジンがハイオクで稼働を始める。勝負どきに備え、かたくなに守られてきた1イニング限定起用。解禁へのフラッグを上げたのは、ほかならぬ球児本人だ。

 「準備は(特別に)していないけど、行けと言われたら行きますよ」

 笑顔で2イニング目突入もOKと宣言した。シーズンが深まり、首位ヤクルトに5・5ゲーム差とまだまだ射程圏内。あとはギアの段階を上げるタイミングだが、機は十分熟している。その状況に応じてハートの燃焼度を高めている。

 「リリーフは行き当たりばったりなんで」と涼しい顔で話したが、決意のほどは大きい。昨年の経験がある。4月からイニングまたぎを続け、同じ94試合時点では1イニング以上におよぶ登板は9度あった。その結果、8月以降に調子を落とし、1試合3失点が2度という屈辱。シーズン終盤の中日、巨人との激しいつばぜり合いで最高のパフォーマンスを出し切れず、優勝も逃した。

 今年は違う。球児の起用方法は細心を極めた。理由はただ1つ。シーズン終盤の総力戦、ラストスパートに備えて、だ。

 肉体的な準備は否定した球児だが、行動には変化が見える。前日21日の横浜戦(横浜)。同点の9回をピシャリと抑え、そのまま降板と思われたが、延長10回の攻撃中にキャッチボールを始めた。9回は11球中、直球が4球だけ。パワーをセーブしているような様子にも見えた。

 2イニング目の可能性は「ない(なかった)。肩が張ったからキャッチボールしただけ」と笑って否定した。とはいえ「まだ投げられる」というデモとも、ナインへの鼓舞ともとれる行動。間違いなく、心には火がついている。

 ブルペンのスペシャリストとして7年目。いつ何どきでもベンチの指令に応え、腕を振ってきた。05年には日本記録(当時)の80試合に登板。過去6年間で384試合も投げ、経験を蓄えてきた。

 後悔はしない。それがチームが勝つための最善策であるなら、球児は2イニング目のマウンドにも上がる。【柏原誠】