<ヤクルト2-3広島>◇30日◇神宮

 降りしきる雨と赤土で、ユニホームを泥だらけにして、ヤクルト相川亮二捕手(35)が引き揚げてきた。延長10回、1点差で敗れた。決勝点は2死二塁から、クローザー林昌勇の暴投だった。林のベースカバーが一瞬遅れ、二塁からの生還を許した。微妙な判定に温厚な小川淳司監督(54)がベンチから掛け出て抗議した。

 それでも、全ての責任は自分にあると背負い込む。暴投はワンバウンドしたフォーク。「不運じゃない。あの場面は自分が止めないといけなかった。(判定とか)それ以前の問題」と厳しく言った。

 29日に精密検査を受け、右手親指末節骨に剥離骨折、亀裂骨折の2カ所の骨折が判明した。検査後、神宮の室内練習場へ送球練習に直行した。特製のサポーターで応急処置をして、強行出場を決断した。1回2死一塁からは痛いはずの右手で、盗塁を刺す。打撃では同点打を含む2安打1打点。「言い訳みたいなことは言いたくない。出ている以上は問題ない」と言う。出場するからには「痛い」とは口にしない。いつも通りのプレーで引っ張った。

 1点を追う10回2死一、二塁では、宮本が13球粘った。結果は三塁ゴロに終わったが、勝利への執念だった。09年に右手親指を剥離骨折した宮本は、強行出場を続けて初のクライマックスシリーズに導いた。

 101試合目、小川監督の54歳の誕生日に4連敗となった。今季延長戦10試合目で初黒星。2位には6月26日以来の2・5ゲーム差に迫られた。暗い数字が並ぶが、頼れるベテラン勢がグラウンドにいる。相川は「こういう試合を取らないといけない。ミスは許されない」と引き締める。残り43試合、一致団結して戦っていく。【前田祐輔】