<楽天8-0ソフトバンク>◇24日◇Kスタ宮城

 異次元の戦いだ。楽天田中将大投手(22)が無四球完封で、日本ハム・ダルビッシュと並ぶリーグトップタイ16勝目を挙げた。プロ5年目で自己最多勝利数も更新。初の年間200投球回にも達した。防御率、勝利数、勝率、奪三振、完投、完封、投球回など、ほぼ全部門でダルビッシュとトップを分け合う。チームの連敗も5でストップ。田中がダルビッシュとのタイトル争いを制すれば…逆転でクライマックス・シリーズ(CS)進出も見えてくる?

 田中は最後までほえなかった。「今日はガッといく場面をつくらなかったのが一番ですね」。絶叫はピンチを脱したときに出る。その機会すら招かなかった。8安打はされても連打はなし。9回2死、最後の打者は1球で片付けた。マウンドを駆け降り捕球すると、一塁へ思い切り投げた。自己最多16勝目と200投球回超えを同時に果たした瞬間、ちょっぴりほおを緩めた。リーグはおろか、12球団でもダルビッシュと2人だけの世界。高い領域に静かに足を踏み入れた。

 負ければCSがますます遠のく崖っぷちで「シンプルに勝つことだけ」考えた。内川、カブレラ、松田。屈指の右打者たちの胸元を突き、外にキレキレのスライダー。「点を取ってもらって楽に投げられました」と無四球完封で締めた。

 18歳で飛び込んだプロの世界。日本一軍団を支えるダルビッシュがいた。5年目に入っても「ダルさんはすごい人」。勝ち星で並んでも「僕の投球に、すごみなんてない」と、かぶりを振る。一方、練習の合間のクラブハウス。スポーツ新聞の成績欄を手に「ダルさんの防御率はこんぐらいなんだ」と気にするそぶりを見せたこともある。尊敬する先輩は、越えるべき壁にもなった。

 越えるためには、素直にアドバイスも受け入れる。7月20日の日本ハム戦。2年ぶりの投げ合いに敗れた。報道を通じ「(田中の課題は)身体能力をちょっと」と言われた。8月7日には自己ワーストタイの7失点。ちょうど「少し疲れが出ていた」(森山投手コーチ)時期。どうやって、この先を戦うか。ウエートメニューを増やしパワーアップを図った。後半戦に入り、疲労回復に効果があるアミノ酸のサプリメントも摂取。「ダルさんに『(飲むと)全然、違う』と言われて」。いちずな思いからだった。

 「タイトルを意識しないと言えばウソ」と言うが、あくまで絶対目標は「先発ローテを守り抜く」。そのためのサプリメントにすぎない。昨季は8月末に右大胸筋部分断裂で離脱。初の目標達成に近づいた。岩隈の負傷など先発が手薄だった6~7月。首脳陣から中5日の先発を打診されたが「間隔を空けさせてください」と中6日を直訴した。楽な方を選んだわけではない。「チームの勝利」に近いと考えただけ。そうして16個の白星を積み重ねた。

 CS争いに踏みとどまる連敗ストップに、星野監督は「やっぱりマサヒロだったな」。全幅の信頼を受けると、試合ではほえなかったが、お立ち台で叫んだ。

 田中

 勝っていくしかない。本当に今「底力」を見せるときです。一戦必勝。ついてきてください。

 残り登板は多くても5試合。宣言した戦いざまを貫き「CS出場権」をつかんでみせる。【古川真弥】