<楽天4-2西武>◇28日◇Kスタ宮城

 瀕死(ひんし)のイヌワシをハイエナが救った。楽天小山伸一郎投手(33)が、同点の7回1死から好救援を決め8勝目を挙げた。極小のテークバックから繰り出す高速すぎるシンカーで、西武4番の中村を併殺打に抑えピンチ脱出。8回は3人で簡単に終えた。小差で回をまたいで勝ちを拾いまくる。星野監督命名のハイエナが、田中に次いでチーム2番目の“勝ち頭”にまでのし上がってきた。

 試合開始の6時間以上前から戦っていた。正午すぎ、がらんどうのKスタ宮城駐車場。その肉体に似つかわしすぎるRV車をふかし、滑り込んできた小山の顔と口調は、たっぷりと怒気を含んでいた。

 小山

 昨日の試合はですね、絶対にやってはいけない試合だったわけですよ。集中を切らしてエラーが続いた。打てない、打たれたとは別問題です。スタメン選手が下がって、チャンスが回ってきた若手にエラーが続いた。見て下さいよ、西武の若いやつら。「一発かましてやろう、ここで目立ってやろう」っていう、ギラついた雰囲気が漂ってるじゃないですか。

 4失策でふがいなく完敗した前夜が許せなかった。

 小山

 僕みたいな年を食ってる選手が、態度で示さないといけません。このままズルズルでは、この1年オレたち何やってたんだ、となる。ケアをバッチリやって、今日の登板に備えますから。出番が来たらやりますよオレ、絶対。

 有言実行の絶好機が来た。同点の7回1死一塁で登場。気温15度を下回る仙台の夜風も関係なし。いつもの半そで、全力ダッシュだ。中島への初球。スライダーが甘く中前打。ピンチ拡大で主砲おかわり。逃げない。高速すぎる真ん中シンカーで遊ゴロ併殺に切り抜けた。「あのシンカー、むちゃくちゃ甘かったですね」。結果が良ければ関係なし。危機脱出で乗った。8回は好調フェルナンデスから。左飛、投ゴロ、最後は秋山を直球で空振り三振。勢い余ってマウンドで1回転しほえた。

 小山

 8回は自分のピッチングが出来た。CSが厳しいのは分かってる。でも最後まで何が起こるか、誰も分からない。だから最後まで全力でやり抜くことが大切なんです。

 その裏、ガルシアがこの日2本目の2ランを放ち8勝目ゲット。確かに何があるか、誰も分からない。

 小山

 (目標の)10勝まであと2つですね。塩見がモタモタしてる間に勝ち星、抜きましたね。ボクが刺激になればいいですね。

 星野監督命名のハイエナはどこまでもたくましく、チームにビシッとくさびを打った。大統領選挙に勝ったかのように観衆に右手を掲げてどや顔。怒りに満ちて登場した10時間後は温厚な普段の顔に戻り、RV車の重低音を鳴らして消え去った。【宮下敬至】