<広島3-4中日>◇29日◇マツダスタジアム

 赤ヘルのアンパンマンが強烈な弾道でマツダスタジアムを沸かせた。広島松山竜平外野手(26)が中日の天敵・吉見から、6回に右翼席へ豪快な2号ソロを放った。本拠地初アーチは、一時は同点に追いつく貴重な1発。結局、吉見に5連敗を喫する結果となったが、「アンパンチ」で観客を魅了した。

 白球が、右翼席中段に突き刺さった。1点を追う6回だ。松山は先頭打者で左打席に入ると、中日吉見の初球128キロスライダーを豪快に振り抜いた。

 松山

 1球目から狙っていた。

 バットを振り抜くと同時に、ガッツポーズの動作に入る。スタンドインを見届け、一塁ベースをまわったところで右拳を力強く握った。6月9日の西武戦(西武ドーム)で涌井から放って以来の2号ソロ。両手に残る感触に酔いしれながら、秋の空気に包まれたダイヤモンドを1周した。本拠地初アーチに「正直うれしかった」と照れた。

 汚名返上の1発でもあった。初回の守備だ。エース前田健が1点を先制されて、なおも2死三塁のピンチ。谷繁の打球は平凡な左飛に見えたが、松山はあと1歩届かず、痛恨の2点目を献上してしまった。記録は「H」。それでも「完全に自分のミス」とスタートの遅れを猛省し、ベンチに戻るとマエケンに「ゴメン」と頭を下げた。天敵・吉見に「アンパンチ」をお見舞いし、結果的にマエケンの負けを消してみせた。

 07年大社ドラフト4巡目指名され、既にプロ4年目。入団当初からアンパンマンと騒がれた。昨季までは2試合出場とくすぶっていたが、ファンから届くアンパンマングッズを励みにした。今季は8月6日に登録抹消されると、2軍でバットの軌道を意識し、徹底的に振り込んだ。9月14日に再昇格すると、19日の阪神戦(マツダスタジアム)でプロ初の4安打をマークし、野村監督の45歳の誕生日を今季最多21安打12得点での逆転劇で祝った。

 「持ち前のパワーを見せてくれた。あとは走者を置いたところで…」と野村監督はさらなる成長を期待する。松山も「チャンスで打てなかったのを反省し、次に生かしたい」と慢心はない。【佐藤貴洋】