<ヤクルト1-0広島>◇7日◇神宮

 宮本魂で、ヤクルトが連敗を3で止めた。広島戦で0-0で迎えた7回2死一、二塁、相川亮二捕手(35)が決勝の左前適時打を放った。宮本に次ぐベテランの一打で先制すると、先発の「ジャイアン」赤川克紀投手(21)は9回途中まで無失点。首位陥落の日、宿舎のホワイトボードに書かれた宮本慎也内野手(40)からのメッセージを受け取り、再び一致団結だ。

 バットを短く持って、集中力を最大限に高めた。0-0で迎えた7回2死一、二塁。相川が1ボール2ストライクから高めの直球に食らいつく。打球が三遊間を割ると、代走田中が本塁に間一髪滑り込んだ。ヒーローは二塁上で手をたたいて興奮。「とにかく勝ちたいと思ってプレーしている。俺が、という気持ちで打席に立ちました。みんながつないで、最後はたまたま僕だった」と喜んだ。

 首位から4カ月ぶりに陥落した前夜。大阪市内の宿舎に戻ると、一足先に帰京した宮本からのメッセージが宿舎のホワイトボードに書かれていた。

 「こんな大事な時期にチームを離れて申し訳ありません。これからのゲームが大事なのは皆分かっていると思いますが、この優勝争いの中で目いっぱいやるのは当然だけど、その中でチームの、自分の一投一打、ワンプレーをしっかり記憶しながらやろう。そうすれば野球人としての血となり肉となり、チーム、そして自分を成長させると思う。1戦1戦積み重ねて、勝負の名古屋で爆発しよう。俺も何とか間に合わせます。ここまで来たんやから、優勝しよう。

 肺炎のおっさんより」

 戦いたくても戦えないチームリーダーの気持ちを胸に、神宮に帰ってきた。相川は言う。「みんな思いは一緒。一番悔しい思いをしているのは宮本さん。責任感の強い人ですから」。

 右手親指を2カ所骨折したままでプレーを続けるが「痛い」とは一切口にしない。骨折当初、試合出場をあきらめかけた。その時、09年にCS出場を懸けて右手親指を剥離骨折しながらプレーした宮本に声を掛けられた。横浜からFA移籍で09年に入団した際、目標は優勝と誓っていた。「今がその時だろ。痛みは1週間で慣れる」と背中を押された。折れかけた心を、ギリギリでつなぎ留めた。

 宮本は不在でも、意思を引き継ぐ相川が決勝打を打って勝った。小川監督は「今日の勝ちは大きい。抜かれた以上はチャンスを持ったまま(10日からの)ドラゴンズ戦を迎えなくてはいけない」。首位中日が引き分け、0・5ゲーム差。宮本が戻るまで、一致団結して粘り続ける。【前田祐輔】