横浜の親会社TBSホールディングス(HD)は27日、ゲームサイト「Mobage(モバゲー)」の運営会社ディー・エヌ・エー(DeNA)への球団売却に関して今日28日に予定していた臨時取締役会を延期すると発表した。両社の交渉では合意しており、この日の取締役会で承認して正式発表することになっていた。TBSHDは「交渉は継続する」としている。前日26日に巨人渡辺恒雄会長(85)が、「モバゲー」を球団名にすることに難色を示した影響が大きいとみられる。

 TBSHD広報部は午後6時前に、報道各社へ「株式会社横浜ベイスターズの株式譲渡に関して、明日予定しておりました臨時取締役会は、延期することといたしました。株式会社ディー・エヌ・エーとの交渉は、今後も続けてまいります」とファクスを送った。

 TBSHDとDeNAの交渉はほぼ合意に至っており、今日28日にそれぞれが取締役会を開いて承認する予定だった。その後、日本野球機構(NPB)へ申請して正式発表することになっていた。こうした流れを受け、NPB側も11月2日に臨時実行委員会を開いて横浜問題について検討する予定を組んでいた。

 巨人渡辺会長の発言が大きく影響を及ぼした。DeNAは「横浜モバゲー・ベイスターズ」という球団名でNPBに申請予定だった。だが、前日26日、渡辺会長が取材に対し「モバゲーという名前で1つの球団を作るのは野球協約上、無理」などと、拒否する考えを明確にした。また、モバゲーという子会社を作って球団運営をすることで球団名を通す案も否定した。野球協約に明確な規定はないものの、商品名の宣伝に球団を利用しないという慣例がある。

 また、DeNAの参入そのものにも疑問の声が上がっていた。理由は、ゲーム課金方法など同社の業務に関する懸念、球団の長期保有に対する不安、12球団が行っているゲーム会社に対するライセンス業務への影響などが挙げられていた。楽天など強く反対する球団もあり、申請しても、参入するためには承認が必要な実行委員会及びオーナー会議で紛糾する可能性がある。

 TBSHDは各球団に理解を求めるなど水面下で動き、申請すれば承認されるという手応えを持っていた。しかし、渡辺会長の発言で、申請をしても球団名を理由に却下される可能性が高くなり、この日になって延期を決断した。

 今後はDeNAが、球団名の変更を了承するかが焦点となる。これまでの交渉過程で、DeNAは球団名に「モバゲー」を入れることにこだわっていたとみられる。従来通り球団名にこだわれば、申請に至らないまま破談も避けられない。ただ、同時に球界参入への意欲も強く、社名の「DeNA」などの球団名で申請する可能性もある。また、その場合でも他球団の反対を抑えきれるかは見えない。いずれにせよ昨年から続く横浜球団の売却問題は、まだ混迷が続きそうだ。