<セCSファーストステージ:ヤクルト2-6巨人>◇第2戦◇30日◇神宮

 重圧のかかる大一番で、どのような仕事をするかが4番の価値を決めると言っていい。数々の修羅場を経験してきた巨人阿部慎之助捕手(32)と、今季急成長を遂げたヤクルト畠山和洋内野手(29)。シーズン成績を比較しても大差はない。だが、この日は阿部がシーズン以上の働きをし、畠山は自らの打撃ができなかった。その差が勝負を分けた。

 阿部の打撃結果は、明らかにシーズン中とは違っていた。この日の3安打は、いずれもカウント1ボールから外角球を強引に引っ張ったという共通点があった。確かに、高打率を残す打者のほとんどが3割5分以上をマークする打者有利のカウントでもある。

 しかし、シーズン中の阿部は同カウントで打率2割1分9厘と、意外なほど低い。2ボールからも打率1割5分4厘と、打者有利のカウントで数字を残せていなかった。私はその原因を「阿部は集中力が持続しないため」だと思っている。それが彼の最大の弱点と言っていいだろう。

 だが、集中力の高まる大一番で一変。外角球を引っ張るという高度な技術で結果を残してみせた。今試合のような集中力がシーズンで持続すれば、初タイトルどころか、とてつもない成績を残せる技術とパワーを備えていると思う。

 一方の畠山は3打数1安打1四球。安打は出ているものの得点に絡む活躍はなし。阿部が本塁打を放った場面と同じ4回2死からは、3ボールから外角球を2球見逃し(結果は四球)。また、走者を置いた3打席目と4打席目は、シーズン中に3割5分1厘と好成績を残している2ボール1ストライクというカウントになったが、打ち損じのファウルと本塁打を狙えるストライクの見逃しに終わった。強引に狙いにいってもいい場面で、思い切りのいい本来の打撃が影を潜めてしまった。

 シーズン中では打者有利のカウントで打てていなかった阿部が結果を出し、打っていたカウントで打てなかった畠山。両4番の明暗が、そのまま勝敗を分けた。