<パCSファーストステージ:日本ハム1-8西武>◇第2戦◇30日◇札幌ドーム

 今季限りでの退任が決まっていた梨田昌孝監督(58)が、4年間の日本ハムでの指導者生活にピリオドを打った。西武に先勝を許して迎えた第2戦は、必死の継投策も終盤にリリーフ陣がつかまり、2連敗で力尽きた。悲願の日本一は成らなかったが、09年にチームをリーグ優勝に導き、中田らの若手育成という功績を残し、札幌ドームのファンに別れを告げた。

 終わりは到来した。穏やかな笑みをたたえ、日本ハムでの4年間の挑戦に幕を下ろした。連敗でファーストSで敗退。梨田監督は、誰よりも早く、一番で三塁側ベンチから歩み出た。左翼席に陣取るファンの前で整列すると、体を折って、最期のあいさつをした。感謝の思い。そして一緒に追いかけた日本一の夢を果たせなかった悔恨。試合後には支えてもらったスタッフ、選手を集めて今季、自身の終戦を告げた。

 梨田監督

 4年間、いい思いもしたけど、つらい思いもしたと思う。みんなには1年でも長くユニホームを着て球団から必要と言われる選手になってほしい。

 執念は空回りした。選手に呼応しなかった。終盤戦で全力疾走を怠り、監督室で猛説教を食らわせたホフパワーが4回に先制弾。最高の流れをつかんだが、先発武田勝が直後の5回に追いつかれ、動いた。ファイナルSの先発要員ウルフを2番手で投入。傾いた流れを取り戻そうと懸命のタクトは振るったが8、9回で一挙7失点と、打つ手はなくなった。無抵抗、無力でゲームセットを迎えた。

 腕組みしたまま見つめた瞳は充血していた。「目はね、強くないんだよ。シャンプーしただけでも目が赤くなる。目はだいたい赤い方だから」。そうは強がっても、万感の思いが沸き上がった。今ステージ前に、札幌ドーム内にある監督室をコツコツと整理。9月に決まった退任の現実をあらためて受け入れながら、日本シリーズでまた戻ってくることを誓っていた。荷物は最低限だけを、まとめていた。

 4年間で知り合った札幌市内などの知人には、時間を見つけて、あいさつ回りをした。日本ハム監督では、このファーストSが最期となる可能性も想定。礼だけは欠かさないようにはしていたが、いまだに実感は薄かった。「なんだかね。まだ、明日、どうすんの?

 って感じ。ユニホームを着てグラウンドに立ちたいくらい」。

 近鉄の選手、監督としてなし得なかった野望の日本一を誓い、北の大地へ乗り込んだ。リーグ優勝1度を含むAクラス3度も、また頂点へは到達できなかった。今日31日に退任会見を行ってケジメをつけ、再挑戦のチャンスを待つ。大失速した終盤戦、この最終戦は歯がゆく、むなしかった。「8月後半から9月にかけて勝てなくなって、選手のいいところを出してあげられなかったなぁと思います」。選手を責めないポリシーは、不変だった。揺るがない監督美学を貫き、ユニホームを脱いだ。【高山通史】