<パCSファイナルステージ:ソフトバンク2-1西武>◇第3戦◇5日◇福岡ヤフードーム

 西武涌井秀章投手(25)は127球目で力尽きた。味方が1点を先制した直後の10回裏、2死二塁の場面。長谷川に対し、フルカウントから勝負球に選んだスライダーが甘く入り同点打を浴びた。完封勝利まであと1人のところで無念の降板。マウンド上では常に冷静な右腕が、感情をコントロールできないほどのダメージを負った。交代を告げられると、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。試合後も無言だった。

 9回までは5安打無失点と、ほぼ完璧な内容だった。直球は140キロ台後半をマークし、変化球のキレも抜群。渡辺監督を「今季一番の出来」とうならせ、捕手の銀仁朗も「球に力があった。(試合前の)ブルペンから違いました」と振り返る、鬼気迫る投球だった。だが、最後は、不完全燃焼に終わったレギュラーシーズンを象徴するような幕切れとなった。

 今季の開幕前から右ひじ痛に悩まされていた涌井は、登録抹消された5月の精密検査で見つかった遊離軟骨をオフに取り除くことを決断。近くクリーニング手術を受ける。来季は万全な状態で、ソフトバンクに借りを返すつもりだ。