ソフトボーイが衝撃的な“野球デビュー”だ!

 日本ハムのドラフト7位ルーキー、大嶋匠捕手(21=早大ソフトボール部)が8日、“プロ初本塁打”をバックスクリーンに突き刺した。今年最初の紅白戦で「8番・指名打者」で先発出場。3回1死で迎えた初打席、初スイングで12球団一番乗りのアーチを放った。第2打席は四球を選び、1打数1安打1打点の満点スタート。この日、フリー打撃時に初バッテリーを組んだ早大の先輩、斎藤佑樹投手(23)に負けない“持ってる”ぶりを発揮した。

 「ガツン」。名護球場に衝撃的な打球音が鳴り響いた。約4秒後、今度は「ゴン」。大嶋の打球はスコアボード下のバックスクリーンに突き刺さった。推定130メートルの“プロ初本塁打”。野球では初体験の感触に「センターフライかと思いました。無我夢中でダイヤモンドを回りました」。中堅陽岱鋼が追うのをやめたのを見て、初めて確信した。

 1球に集中した。この日の紅白戦は5回制。打順は8番で「1打席勝負と思っていた」。紅組2番手の植村から2球目まで、しっかり球を見極め2ボール。「ストレートに絞っていました」と、真ん中付近に来た直球を初スイングで仕留めた。「いやいや、たまたまです」と話すが、最初のストライクは必ず振ると決めて実行し、最高の結果を出した。

 強烈なアピールをしたルーキーに栗山監督も賛辞を贈った。「あそこで打てるというのが持ってますよね。練習でも、なかなか放り込めないよ」と驚きを隠せなかった。今日9日の紅白戦も「明日、使わなかったら、みんな怒るでしょ」と、再び「8番・DH」で実戦機会を与えることを決めた。

 異種競技からの挑戦。もちろん悩みも多かった。捕手としての守備面だけでなく、売りの打撃に関しても「打球が上がらないんです」。1月の新人合同自主トレ中は、どうすれば高く遠くへ飛ばすことができるかを考え続けた。右足を上げてタイミングを取るのか、すり足にするのか。どんな軌道のスイングがいいか。「ソフトボールではバットとボールをぶつけるように振れば飛んだんですけど、野球ではそれじゃダメですね」と試行錯誤を重ねた。

 その成果が初打席前に表れた。素振りをしていた時に「いいスイングができたなと。これ、いいなぁと頭で考えていたことができた」と、イメージと実際のスイングが合致。「ひらめきです。この感じでいったら、大丈夫かな」という思いで打席に入り、思い描いた打球を飛ばした。

 紅白戦に出場するため、この日初めて1軍の練習に参加。緊張もあったが、同じ早大出身の斎藤がリラックスさせてくれた。アップ中「どこの道具使ってるの?」など声をかけてもらった。幸先のよいスタートをアシストしてもらったが、本人に慢心はない。「今日はいい結果を残したけど、もっと練習して、もっといい結果を出せるようにしたい」。ソフトボール界の逸材からプロ野球界の期待の星へ。第1歩を大きく踏み出した。【木下大輔】

 ◆大嶋匠(おおしま・たくみ)1990年(平2)2月14日、群馬・前橋生まれ。野球経験は小学校時代のみで、中学からソフトボールを始めた。新島学園1年時にインターハイ、国体で優勝し、アジアジュニア選手権U-19日本代表にも初選出され「5番・捕手」として優勝に貢献。早大では1年春からベンチ入り。尊敬する人物は元総合格闘家でタレントの須藤元気と元大リーガーの新庄剛志氏。将来の夢はメジャーリーガー。180センチ、95キロ。右投げ左打ち。