「侍ジャパン」の4番はおかわりしかいない。昨季本塁打王の西武中村剛也内野手(28)が18日、今季初の対外試合となる韓国ロッテ戦(南郷)の4回、左中間席へ推定飛距離130メートルの放物線を描いた。3月10日の東日本大震災復興支援試合の台湾戦(東京ドーム)で日本代表に初選出。この日、同代表のユニホームが届いた。日の丸に初めて袖を通した門出の日に、豪快な1発を放った。

 打った瞬間、左翼手の足が止まった。球場中の視線を独占したのは、猛烈な勢いでスタンドに進む一筋の放物線だった。中村は「普通の感触ですよ」と淡々と振り返ったが、周囲の期待は「どこまで飛んでいくのか」の1点だった。左中間最深部のフェンスに直撃する推定飛距離130メートル弾。プロ野球記録の55発に照準を定める“アーチスト”にとって、「日の丸の4番」を強烈に印象づける今季1号だった。

 偶然とはいえ、不思議な縁を感じずにはいられなかった。午前11時、日の丸のユニホームが届いた。野球人生初となる「夢の戦闘着」に袖を通し「うれしい思いもあるし、身が引き締まる思いです」と万感の思いを表現した。4番が有力では?

 との質問には「そういう打順で出られれば、うれしいですけど」と話した後に「緊張しそうですね」とニヤリ。未知の領域にもはにかむ姿があったが、バットで資格を証明した。

 08年を皮切りに、09年、昨季と本塁打王を3度獲得したが、意外にも日本代表の経験はなかった。「(09年の)WBCもあまり見てなかったですね。(キューバ代表の)チャップマンの投球を見たくらい」とポツリ。それでも「野球選手である以上、(日の丸の)ユニホームを着たい気持ちがあります」と胸の奥にはあった。13年には第3回WBCが開催予定。3月10日の東日本大震災復興支援試合の台湾戦に向け、らしさ全開の1発で幕を開けた。

 新たなバットも、試合に入れば同じだった。今季からヘッド部分の直径を2ミリ細くした新バットを導入。920グラムから10グラムずつ増量した4種類のバットを用意した。自主トレ中から試してきたが「バットに関しては特にないですよ」とピシャリ。自分のイメージとバットの軌道が合ってきた証しだった。3月10日、周囲が期待するのは“おかわり弾”。その思いをくむように、中村は言った。「むちゃくちゃなスイングをするんじゃなく、自分のスイングで、結果的にホームランにできれば」。【久保賢吾】