焦らない、慌てない-。ソフトバンク帆足和幸投手(32)が23日、紅白戦に初先発し、2回3安打2失点、4四死球とほろ苦デビューとなった。本来の制球力と球の切れはなかった。それでも開幕投手候補に挙げられる左腕にとっては予定通りのスロー調整。FA移籍で加入した新戦力は「試合を重ねれば大丈夫」と言い切った。

 スタンドから低く「う~ん」の声が漏れた。今季新たにローテの一角を担うFA左腕・帆足が紅白戦に初登板とあって注目度は高かった。ただ、本人も期待外れのデビューに苦笑い連発だった。

 「ゴロを打たせる持ち味の投球を心がけたけど、四球が多すぎました。結果よりも内容ですよね。失点は四球が絡んだのでストライク先行でいきたい」

 反省の弁が出るのも当然だ。1回。先頭の本多にフルカウントからいきなり四球を与え、2死三塁で松中も同様に四球。ここから連打で2失点した。2回は本多に1ストライクから4球連続ボール。コースを狙った球がことごとく外れた。報道陣に43球と知らされると「まあそうですよね」と頭をかいた。打者13人に43球を費やし、ボール球は実に20を数えた。昨年の与四球率1・82からすれば本来の帆足ではなかった。

 「自分は真っすぐで打ち取るタイプではない。コントロールをつけて、四球は絶対に避けないと」

 この日も直球の最速は130キロと、制球力が生命線の投手だけに苦い内容となった。もっとも、プロ12年目。豊富な経験から「焦りすぎない」と自ら手綱を引いており、秋山監督も「まだまだだなあ」とそこは理解。今は無理をする時期ではない。修正ポイントも把握していた。

 「フォーム的に少し突っ込みすぎている。軸をつくって投げたら腕は振れてくる。今日は軸がバラバラでした」

 制球がいい帆足がブルペンであえて行う“ワンバウンド投球”は修正法の1つ。「自分は腕の出方からして、どうしても横振りになる。それを縦になるよう意識してやってます」。昨季も試合中、ベンチ前のキャッチボールで行っていたメニューで微調整していく。

 1週間ほど前から右耳が聞こえにくく、キャンプ休日の22日に病院で滲出(しんしゅつ)性中耳炎と診断された。当初は突発性の難聴かと気をもんでいたが、不安は薄れた。今後は自分のペースで仕上げていくだけ。オープン戦に向けて「今日は久しぶりに打者と対戦できてよかった。これから試合を重ねていけば大丈夫」と言い切った。最後に見せた、結果と対照的な落ち着きが自信の裏返しだ。【押谷謙爾】